目の前に来た普天間返還
沖縄全体の再開発考えるべき

(「観光とけいざい」第651号04年3月1日。WEB公開04年3月13日)

沖縄観光速報社・渡久地 明

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(1)普天間の役割は終了
(2)出ていた撤退のサイン
(3)アメリカの国益が最優先
(4)アジア見渡す再開発が必要
基地返還アクションプログラム(素案)、返還の機関別施設名一覧

 普天間基地の代替施設なしの返還も検討されているというニュースが流れたのは二月十三日の毎日新聞の特ダネからだった。その後、各紙がSACO見直しをアメリカが打診してきているとの報道を行っており、アメリカの都合で普天間基地が動こうとしているのは事実である。沖縄海兵隊は朝鮮半島有事の韓国米軍の応援のための戦力であり、北朝鮮の崩壊を見越して米軍は沖縄から後退するという見方が軍事的な常識である。辺野古の埋め立てはなくなり、焦点は普天間返還後の再開発の在り方に移った。(本紙・渡久地明)

1、普天間の役割は終了

 朝鮮半島が安定するなら沖縄海兵隊は撤退するとの見方が軍事専門家の間にあった。また、大田昌秀県政で副知事となった吉元政矩氏は二〇一五年までの沖縄米軍基地全面返還を求めて、基地返還アクションプログラム、返還後の沖縄の在り方について国際都市形成構想を九四年には打ち出していた。九五年の米兵による少女暴行事件で国際都市形成構想がクローズアップされたが、実際には事件の前の構想だった。

 少女暴行事件に端を発した沖縄基地問題は九六年に橋本・クリントン会談で普天間基地の五〜七年以内の返還が決まり、九六年十二月には他の施設返還も含むSACO(日米特別行動委員会)最終報告となって返還に向けた作業が始まった。この時、普天間の代替施設として撤去可能な海上へリポート(長さは約千五百メートル)が提案された。

 いま、北朝鮮はいよいよ持たなくなり、沖縄海兵隊の撤退が現実のものとなった。

2、出ていた撤退のサイン

 米軍の沖縄からの撤退のサインはアメリカ側からも出ていた。まず、普天間代替の海上へリポートを「撤去可能な」ものとし、撤退を織り込んでいたことである。

 また、アーミテージ氏らが中心になってまとめた九七年のCFRレポートでは日米同盟の強化を求めるなかで沖縄問題について触れ、次のように述べている。

 「安保関係は、同盟体制における政治的権限と軍事的責任をめぐる不均衡・非対称性を低下させることで強化できる。その場合、日本は集団的自衛権を否定する解釈を放棄し、地域的な緊急事態における支援体制を正当な自衛権の解釈に含める。こうして日本は、起こりうる軍事紛争の対応計画に『想定され』、自衛隊は米軍とより緊密に協力する。ひきかえに日本は、日米安全保障体制のなかでアジアの軍事危機に日米の軍隊が関与する際の政治的決定により大きな発言権を持つ。そうなれば、沖縄の基地問題も、防衛庁と国防総省との長期的な協力構想の枠組みのなかで扱うことができるようになる」

 同盟強化によってアジアの中で日本の発言権は高まり、おまけに沖縄基地問題についても東京とワシントンで解決できる、といっていたのだ。

 普天間基地の跡利用に関する調査(南西地域活性化センター 「米軍基地跡地利用を推進する新たな組織の設立可能性に関する研究」 総合研究開発機構(NIRA)の委託)チームに入った筆者はアメリカ取材の際に、このレポートの著者に会いたいと国務省を通じて申し入れた。すると「アーミテージが会うといっている」という。筆者は九九年十二月に調査チーム八人とともにアーミテージ氏に面会して「沖縄基地に長居はしない。アジアが安定したら出ていく」という発言を引き出し、〇〇年一月一日の本紙新年号(第五六〇号)に掲載したという経緯である。

 その後、〇〇年十月のアーミテージ・レポートは、

 「一九九六年、SACO協定によって在沖米軍基地の再編・統合・削減が求められた。日米両国はその協定を実施することになっており、削減は普天間飛行場も含めて五千ヘクタール、十一施設にたっする。

 我々はSACO協定が第四の大事な目標を盛り込むべきであったと思う。アジア太平洋地域における(米軍基地の)分散化である。軍事的見地からすれば、米軍が地域全体で広範かつ柔軟なアクセスを確保することは非常に重要であり、一方政治的見地からすれば沖縄県民の負担を軽くすることが不可欠である。そうすることによって、永続的で信頼できるプレゼンスを確保できるのである。日本における米軍の戦力構造に関する検討はSACO協定の段階でとどめてはならない。米政府は、アジア全体を通じて海兵隊のもっと広範で柔軟な展開と訓練のオプションを考えるべきである」

 と述べ、沖縄基地の削減を踏み込んで示唆している。

 〇〇年の大統領選挙でブッシュ政権が誕生、アーミテージ氏は国務副長官として米政権中枢に陣取り、アジア、日米同盟のエキスパートとしての影響力を行使することとなる。

 このアーミテージ・レポートに示された内容を忠実に実行する政権が日本に誕生したのが翌〇一年春の小泉純一郎首相である。小泉政権が自衛隊のイラク派遣など同盟を強化したため、沖縄米軍の撤退がやりやすくなったのである。

 アーミテージ氏と筆者のやり取りを見た軍事アナリストの神浦元彰氏は〇一年、自身のHPで「北朝鮮の崩壊が近づいており、その時は沖縄米軍は撤退するという意味だ」と指摘。〇二年、那覇で吉元氏、下地幹郎代議士を交えてのオフ会につながった。この時、神浦氏は朝鮮半島統一による米軍基地の撤退を理論的に解明し、吉元氏は普天間基地の県外移設、下地氏は嘉手納統合、両者とも辺野古の埋め立ては不要と唱えた。神浦氏は県外移設、嘉手納統合は両方ともあり得、結局、沖縄基地はなくなると述べ、その通りになった。

3、アメリカの国益が最優先

 アメリカは国益のため軍隊の世界的再編を進めている最中である。沖縄基地がリストラの対象になっている。今年二月の毎日新聞は、昨年十一月に来沖したラムズフェルド国防長官(アーミテージ・レポートの共同執筆者でもある)は空から普天間を視察し「こんな所で事故が起きない方が不思議だ。代替施設の計画自体、もう死んでいる」といい、SACO最終報告の見直しを国防総省に指示したという。

 稲嶺知事は県庁でラムズフェルド国防長官と会談し、相当強力に沖縄県民の負担軽減を申し入れた。ラムズフェルド氏が辟易している様子が県民にTV中継された。

 米軍の世界的再編の全容はまだ明らかになっていないが、韓国米軍を北朝鮮との国境線から大きく南に下げる案は報道されている。反面、韓国軍は戦力を強化しているが、これは韓国軍が軍事力の空白を埋めるためという理屈である。南北朝鮮問題が解決した場合、在韓米軍は中国と直接向き合うことになり、この状態は中国を刺激するから米軍は撤退を選ぶ。同時に沖縄も中国に近すぎるからグアムやハワイ、昨年の報道ではオーストラリアまで下がるという案も検討されている。沖縄の軍事的空白は自衛隊が埋めることになる。

 東アジアでは概ねこのようなシナリオが描かれ、日本もそれに備えて同盟を強化している。アーミテージは『文春』三月号のインタビュー記事で再び「憲法九条は同盟の邪魔物だ」と述べ、いま憲法改正が現実に議論されているのである。

4、アジア見渡す再開発が必要

 普天間の返還に当たっては政府は特別の再開発をすると閣議で決めている。しかし、具体的な開発の目玉があるわけではない。地元がつくる再開発計画を後押しするというスタンスだ。

 実はこの跡利用を構想することが簡単ではない。広大な基地返還に伴い沖縄全体の供給能力が飛躍的に高まることになり、供給先は国内はもちろん海外を想定すべきである。筆者ならこの際、沖縄全体の投資効率を高めるための@糸満=那覇空海港=普天間=コザ=名護を結ぶ鉄道建設A那覇空港の沖合い展開B輸出入コスト削減のための大深度港湾と三点セットでインフラ整備をすべきだと考える。また、普天間以外にも大がかりに基地が削減される可能性があり、再開発が必要になる。

 しかし、何を供給し、それらが現実に需要されるかという問題がある。何が一番儲かるかというわけだが、それが分かっていれば誰も苦労しないし、いまの不況も不良債権もあり得ないわけだ。しかし、われわれは現実に普天間の四百五十ヘクタールがアメリカの都合でポッカリ空き、収入が大幅に減るという現実に直面しているのである。

 直観的に供給できるのは@リゾート産業やA最近猛烈に売上を拡大している県産品である。これまでになかった工業製品も製造しなければ間に合わないくらいの供給体制が整うことになる。普天間跡地はシティーリゾートか、若しくは海浜リゾートのための土地の交換分合の用地がよいかも知れない。すなわち、リゾート適地にある公共・民間の非リゾート施設を集めるスペースである。

 いま日本各地で新たな需要をつくり出すために試みられている特区制度が行き詰まっているように、何が新たな需要を生みだすのか、誰も分からないのである。しかし、普天間再開発は成功しなければならない。国内はもちろん海外との相互作用によって新たな需要が生みだされる可能性を追求すべきだ。

 このような再開発を行うには普天間だけを見ていては、規模が小さくなりすぎて効果が現れず、失敗する可能性が高まる。また、財政難のおり、政府は必要な予算を低く見積もる可能性があり、懸念材料である。内需を拡大しておかないと、沖縄の供給が増えたために国内の他の産地のシェアが減少、たち行かなくなる地域がでる恐れも少しある。かつて、南国宮崎は沖縄の日本復帰によって新婚客が激減した経験がある。沖縄の供給力拡大は警戒されよう。やはり、不況を脱出しておくべきだ。同時にアジアの需要を沖縄が吸収する構想を持つべきだ。

 基地返還後の沖縄再開発についてかつて沖縄県は国際都市形成構想(九四年)を準備していた。内容は基本的なツボはおさえられており、いまでも充分に通用するものと思われる。

 簡単に振り返る。国際環境変化の中の沖縄の位置づけを「豊かな国際交流の歴史」の経験から「急成長遂げる近隣アジア諸国」の結節点とした。国内での位置づけを「アジアと日本を結ぶ南の交流拠点」としている。その上でアジア太平洋の交流拠点であると設定し、アジアの国々の多面的交流の掛け橋としての役割があると規定している。その実現のために沖縄独自の資源を活かした活力と魅力あふれる、質の高い国際都市を実現すべきと理想を掲げ、県民には沖縄型クオリティ・オブ・ライフの実現を約束している。

 構想の素案には具体的に次のものが挙げられている。

 国際交流センターゾーン(学術・文化拠点=中南部国際学園都市、国際交流拠点=宜野湾国際交流都市)▽新都市拠点=那覇国際新都心、嘉手納新国際都市▽国際物流拠点=那覇港国際物流都市▽国際航空拠点=那覇空港国際臨空都市▽国際平和外交拠点=国際平和創造の杜▽国際リゾート拠点=南部海岸国際ヘルスケアリゾート▽新産業開発拠点=トロピカルテクノパークシティ▽国際文化観光拠点=沖縄国際文化観光都市▽亜熱帯農業研究開発拠点=読谷先進農業地域▽文化・芸術拠点=首里国際文化都市。

 国際都市の形成推進に向けての戦略プロジェクトには次の四つが挙げられている。@平和外交等、国際交流による国際都市形成A学術・研究を通じた国際貢献の推進B東南・東アジア経済・文化交流拠点の形成に向けた基盤整備C国際都市形成を通じた「豊かさ」の実現。

 大変純朴だが、必要なメニューは相当広範囲に網羅されていると思われる。

 米軍の世界的再編は大統領選挙前に骨格が公表されるという報道もあり、韓国米軍の移動の様子は年末には明らかになる。中国は〇八年の北京オリンピックの前には北朝鮮問題を解決しておきたいと考えており、沖縄米軍の再配置はそれまでに終わる可能性が高い。

 最後に、沖縄県が準備していた二〇一五年までの基地返還アクションプログラム(九六年)のスケジュールをもう一度見ておこう。この内の第二期までの返還がアッという間に進むかも知れない。

基地返還アクションプログラム(素案)、返還の期間別施設名一覧

【第一期、〜〇一年】 那覇港湾施設、普天間飛行場、工兵隊事務所、キャンプ桑江(施設一部)、知花サイト、読谷補助飛行場、天願桟橋、ギンバル訓練場、金武ブルービーチ訓練場、奥間レストセンター。

【第二期、〇二年〜一〇年】 牧港補給地区、キャンプ瑞慶覧、キャンプ桑江、泡瀬通信施設、楚辺通信所、トリイ通信施設、瀬名波通信施設、辺野古弾薬庫、慶佐次通信所、キャンプ・コートニー、キャンプ・マクトリアス、八重岳通信所、安波訓練場、北部訓練場。

【第三期、一一年〜一五年】 嘉手納飛行場、嘉手納弾薬庫地区、キャンプ・シールズ、陸軍貯油施設、キャンプ・シュワブ、キャンプ・ハンセン、伊江島補助飛行場、金武レッドビーチ訓練場、ホワイトビーチ地区、浮原島訓練場、津堅島訓練場、鳥島射爆撃場、出砂島射爆場、久米島射爆撃場、黄尾嶼射爆撃場、赤尾嶼射爆撃場、沖大東射爆撃場。

 沖縄基地の総面積は〇一年三月末現在、二万三千七百五十三ヘクタールである。  


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