インタビュー特集 いま観光業界に何が起こっているか
オピニオンリーダーが現状と対応を語る


変化へ 10項目の論点

 旅行・観光業界にさまざまなことが起こっている。昨年の沖縄サミット以来、沖縄観光の様子がガラリと変化してきた。変化の項目を挙げると、@旅行客の減少によって、実質的に業界の収益が減少しているA県内老舗ホテルの廃業など沖縄観光に影が差しているのではないか、という不安B一方で、格安ホテルの新設ラッシュC明暗を分ける土産品業界D好調なレンタカー業界EITブームでどのように旅行業界が変化するのか漠然とした不安。早く導入しなければというあせりF旅行客そのものはどう変化しているのかG大手旅行社の統合の影響がどう出るのかH航空会社の直売体制は今後どう影響してくるのかIその他。これらの変化がどのように実際に起こっているのか、観光業界に何が起ころうとしているのかを、各業種のリーダーにそれぞれの業種についてインタビューして、全体像を探る。(文中敬称略)(取材構成・渡久地明)


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季節変動がなくなってきた

泡盛館・館長 宮城 昭義

――泡盛は観光客によく売れており、県内での消費金額のバロメーターになると思う。そこで観光客の多い泡盛館での売れ行きが気になる。

《宮城》 六月で泡盛館は六年目の決算となる。今年に入って売れ行きに顕著な変化が見られる。例年、四、五月は泡盛館にとってオフシーズンだったが、今年は波がなくなっている。

――ホテル稼働率を見ていると分かるが、沖縄観光の季節変動が緩やかになってきている。一頃のオン・オフという季節変動がなくなりつつある。ラグナガーデンの増築計画を説明した全日空エンタープライズの担当者は「多様な割引が今後もどんどん出てきて季節変動は一層平準化する」と述べている。

《宮城》 その通りの結果につながっているのではないか。いままで観光客が行かなかった時期に超割などがあり、旅行商品も一万九千八百円といったものがあるという。これは明らかに飛行機会社の政策だ。いい方向に風が吹いている。

 泡盛館は首里城に近いので、ここで千人のイベントがあると一人は泡盛館まで足を運んでいる。年間のお客さんはいま五千人前後で観光客全体の〇・一%を占めている。

 インターネットのアクセスは毎日百五十件あり、このうち一%から注文がある。売り上げ全体の一〇%はインターネットだ。

――インターネットの比率はそれほど高いのか。

《宮城》 修学旅行の高校生も多く訪れるが、ほとんどがインターネットでの事前学習で泡盛館を調べている。インターネットの効果は顕著だ。観光産業にはインターネットがどうしても必要だと思う。

――泡盛館のインターネットの取組は早かった。具体的にどんな使い方をしているのか。

《宮城》 四、五月、十、十一月は泡盛館のオフだった。そこでTシャツキャンペーンというのをインターネットで展開した。この時期に泡盛館に行くとインターネットで連絡したお客にはTシャツをプレゼントするというものだ。告知には「るるぶ」を使った。実際に月間二十〜二十五着の実績があった。このような方法でボトムの底上げには知恵を絞ってきた。また、六月の梅雨の時期を見計らって毎年コンサートを開いている。今年は九日に「登川誠仁IN泡盛館」というイベントをやる。定員四十人に対して十五人は東京・名古屋からの参加者だ。航空券が安いから参加し易いという環境が整ってきた。

――面白いですね。

《宮城》 泡盛館にもよく出てもらっているミュージシャンの平ゆきさんは「平ゆきと行く伊集ぬ花癒しの郷を訪ねて」というツアーを毎年梅雨のこの時期に開いて成功している。伊集の花が梅雨に咲くからこの時期を選んでいるが、旅費も効果的に設定している。

 このようなイベントをやってみて分かったのは、レジャーが天候に左右されるのに対し、文化をテーマにした集客は天気に左右されないということだ。

航空会社の好決算に注目 沖縄観光に回復の兆し

――それは泡盛館の規模や企画者のキャラクターに限定されるのではないか。

《宮城》 特色があれば規模が大きくなっても応用が効く。もし首里城を使っていいということになれば、泡盛とホテルの料理、琉球舞踊を見せるイベントが成り立つ。首里城には折角酒蔵があるのだから。そう考えると、季節変動のデコボコをなくす方法はいくらでもあると思う。

――宮城さんは時間とともに価値が上がったのは戦後は泡盛だけだ、と古酒市場に着目した。いろんなアイデアが出てくる。

《宮城》 どうビジネスとして成立させるかを考えるべきだ。沖縄観光全体にオフがあるとしたら、大手旅行社に売ってもらうのに加えて、飛行機料金が安いときにリピーターに直接呼びかけると効果が上がるのではないかと見ている。オフの時にはリピーターには一室二千円で提供してもよい。飛行機会社が超格安運賃を設定しているのは、規制が外れて利益が上がる体質になってきたからだ。利益が上がっていれば今後もますます沖縄にも投資できる。運賃はもっと安くできる。そのことが連鎖してホテルを増やすという強気 の動きにつながる。ラグナの増築はその現れと見る。航空会社の決算で利益が出始めており、これは沖縄にとっていい循環になる。

 ある時期には台湾や韓国からの旅客も増え始めると思う。旅行客が沖縄旅行になれてきたらやはり文化をテーマにしたところが強くなると思う。

――明るい展望が見えたと。私の計算では今年の観光客数は四百八十万人は固い。八月まで一昨年の水準に戻るだけでこのくらいは達成できる。目標の五百万人まであと二十万人だ。その分はやはり政策努力として上乗せすべきだ。

《宮城》 アハハ。航空会社が儲かっているという事実は大変よいことだ。自主性が出てきてホテルにも投資するという動きに必ずなる。

 泡盛そのものは本土の人が飲むようになってきたので市場は拡大傾向が今後も続く。泡盛館そのものの売れ行きに変動がなくなってきたということは観光業界そのものにも明るい兆しが見えてきたということに直接結びつく。いまの四百八十万人という具体的な計算や、航空会社系のホテルの増築という目に見える事実があると先行き明るい見通しがつく。県内他の大手施設はもっと伸びるのではないか。泡盛館の工夫を応用できると思う。(「観光とけいざい」2001年6月1日)


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こだわりの事業が生き残る

御菓子御殿常務 宮城 肇

――御菓子御殿のような沖縄観光のバラエティーを豊かにする施設が求められていたと思う。業界の反応はどうか。

《宮城》 確かにバラエティーが必要で、旅行社の反応はたいへん良い。ほとんどの旅行社と契約を結ぶことが出来ると思う。

 計画を実現するには大変厳しい局面もあったが、五年がかりで実現できた。景気の後退時期に重なったが、情熱があったからこそ実現できた。

――単純にバラエティーが必要だからといってできるものではないですね。

《宮城》 その通りだと思う。琉球村、玉泉洞、東南植物楽園などいま生き残っているところはみんなこだわりがあり、情熱があったから出来た施設だと改めて痛感している。東南植物楽園にいたから解るが、大林園長の植物へのこだわりは大変頑固なものがあった。園内にテントや旗をたてさせない。植物のじゃまになるものは園内に入れないという哲学だ。それにこだわったので最初は里道しかなかったのが、いまでは広い道路ができた。真剣な姿勢は回りを動かすし、絶対に伝わるものだ。

 御菓子御殿もこだわりを持ってものづくりをする施設だ。

――ポルシェの紅いもは大変有名になっている。

《宮城》 会長、社長のこだわりがあったからだ。紅いもを使ったお菓子は読谷村の村おこし事業の中から出てきて、ずっとそれをつくり続けている。最近、紅いもの効用が知られるようになってきたが、実際作り続けるというのは大変なことだ。

――県内では、新しい観光施設の建設は相当に難しいということか。

《宮城》 相当難しい。しかし、考え方を変えればちょっとしたことかも知れない。沖縄観光の消費金額はトータルには増えているが、分散している感じはする。二十年前とは比較にならないくらい売り上げは減少していると思う。しかし、あの頃のイメージをいつまでも持ち続けていると間違う。御菓子御殿の会長、社長にはそのころの観光業界を知らない。堅実な製造業者であり、その発想から出てくるのは合理的なコスト計算だ。だから、これからの観光産業ではユニークな地位を占めると思う。

 二十年来の営業の経験から観光業界ではあっちがこうするから、こちらも同じことをやるというおかしな競争が起こるが、それでは自分の首を絞めるだけだ。お客の立場、旅行社の役割、自らの経営がうまく成り立つように考えなければならない。

 いま、沖縄土産のお菓子類の七割は県外産で、それを沖縄の特産品として堂々と空港でも売っている。卸業者が同じだからそうなる。しかし、御菓子御殿の製品は読谷村の紅いもを使い、それをお客の目の前で生産する。いま、一日一万個の紅いもタルトを七〜八人がかりでつくっているが、ここでは機械も使って同じ量が二〜三人で出来るようになる。順調にいけばもっと安く生産することも可能になる。

旅行社はパートナー 下期には徐々に市場に浸透

――ショッピング業界からどう見られているか。

《宮城》 アハハ。ショッピング業界は競争相手が増えることになると厳しい見方をしてるのじゃないか。ショッピング業界の反応は聞いてないよ。

 旅行社からは久々の新しい施設だと歓迎されている。観光施設にとって旅行社はすばらしいパートナーだ。手数料を支払うことは、お客に返っていくのであって、お客の立場を大切にする旅行社が生き残っていく。旅行社はお金をかけてお客を集めている。苦しいときには一緒に苦しいし、その逆もあるのが旅行社と観光施設の関係だと思う。だから、出来ることと出来ないことははっきり言うし、競争にあおられて自分の首を絞めるようなことはしない。

 最近IT革命や中抜きという人もある。資本主義であり、淘汰は避けられない。ショッピング施設も手数料だけのビジネスをやっていては持たない。こだわりが必要だというのはこのことだ。堤社長がこのインタビューの中でいっているように、自分の役目をしっかり果たしていくという、こだわりのある旅行社が生き残ると思う。

 建物が出来てくると次第に各方面から注目されてきたのが実感できた。下期から御菓子御殿は徐々に市場に浸透していくから見ていて欲しい。最初が肝心であり、キッチリと誘客していく。オープンまでの苦労はあったが、これからが本番だということも覚悟している。

――今後の沖縄観光の伸びをどう見通しているか。

《宮城》 過去のような大きな伸びは見込んではやっていけない。せいぜい年間五%の伸びではないか。それでも他の産業から見ると大きい。年間五%の伸びをほんとにありがたいと思わないと、これからの観光産業は厳しいと思う。低成長を覚悟しておかなければならない。(「観光とけいざい」2001年6月15日)


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夏休みに県内向け料金

ホテルマハイナウェルネスリゾートオキナワ専務 渡久地 剛

――七月二十二日から八月いっぱいという夏場の最ピーク期に県民向けの格安料金を設定した。

《渡久地》 一年がかりの計画だ。去年、渡久地記者から夏場の最ピークには県内客がとれるリゾートがない、といわれ真剣に受け止めた。ハッとした。同じことを感じている人がいっぱいいそうだと思った。そのとき夏の格安料金に取り組むと約束したことを覚えていると思う。

――それはうれしい。この時期に大人二食付き八千八百円を出すことができた仕組みは。

《渡久地》 この時期、客室が全部ブロックされているというのが県内リゾートでは一般的だ。中には一五〇%ブロックされていると言うところもある。「マハイナ」の場合、ホテルオリジナルの長期滞在プランを提供していくことを開業当初から目標にしている。そのためホテル独自の客室を半分近くとかなり持っている。稼働率も夏場を除くと四五%程度の目標を立てており、独自で販売する余地がある。

 夏場についてはツアー客を入れた方が売り上げは上がるだろう。しかし、一番いい季節に県内客が利用できず、ピークが過ぎて部屋が空いたから県民に安く部屋を出すという方法はとらない。

 同時にこの時期には台湾からの需要も非常に強い。県内ホテルがピークシーズンには台湾市場に部屋を出さず、ピークが過ぎてから台湾客どうぞ、というやり方だ。これでは台湾客から不満が出る。実際に台湾の旅行社からピーク時にリゾート客を送り込みたいという引き合いがある。台湾では海に出られない。沖釣りさえできず、ダイビングもできない。それでグラスボートに大変人気がある。台湾客が夏の沖縄をどうとらえるのか、年間を通じてつきあってみようという気持ちもある。いま、台湾からの旅行客はクルーズ船を除くと数万人の規模だ。しかし、台湾側の説明だと人口二千百万人、海外旅行に出るのが年間七百万人。そのうち一%を沖縄が吸収しても七十万人になるといっている。

 このようなニーズに応え、市場の信頼を得るために最ピーク時に格安料金を設定した。

――開業一年の実績は。

《渡久地》 おかげさまで順調だ。年間稼働率も約五〇%と目標を上回ることができた。

長期滞在へ初の取り組み 成果見極めにあと2年

――長期滞在の実績は。

《渡久地》 かなり売れている。一週間料金が二万七千円、四週間料金が十万八千円という設定で、一週間だと一泊四千五百円、二週間なら四千三百円、四週間なら四千円となる。このような商品は旅行社が取り扱わない。インターネットや東京でチラシを配るなどの方法で集客している。これが結構口コミで広まっている。

――長期滞在客の沖縄での行動は。

《渡久地》 みんなレンタカーを使って出かけている。ホテルが用意したプログラムに興味を示す人とそうでない人があるが、これは今後さらに検討を加えたい。また、インターネットを見る層と長期滞在客は年齢層が全く異なると思っていたのに、意外と若い人が長期滞在していることもわかった。インターネットでは「おじいさん、おばあさんにこの情報を教えてあげてね」と告知しているが、若い人がそのまま訪れる。

――長期滞在を正面から打ち出した初めてのリゾートホテルとして注目している。

《渡久地》 いまリゾートホテルで長期滞在を商品としているところがないし、実際にはムリだとみている。というのも大手リゾートが年平均七五%という稼働率を達成しているが、七五%をキープするには一〇〇%の日が必ずある。その日だけ長期滞在客は別にところに泊まってくれというわけには行かないからだ。

――県内リゾートがいう長期滞在というのは四泊くらいのことではないか。しかし、シンポジウムなどで出てくる長期滞在というのは一週間以上のことだと思う。

《渡久地》 料金体系は変えずに四泊滞在して欲しいというのがリゾートホテルの長期滞在という意味だ。しかし、「マハイナ」は一週間料金を設定して、一日当たり四千五百円という価格を実現している。長期滞在とはこのことであり、これまで実際に取り組まれたことがない。「マハイナ」の取り組みはまだあと二年くらいの経験が必要だと考えている。つまり、流通と組んで初年度から年間七五%の稼働率を維持するのか、あるいは、独自販売の比率を高めて初年度の稼働率は五〇%だったが、二年目に六〇%になり、三年目に七〇%まで持っていけるかが試されている。どちらのやり方に利益が出るのか、今のところわからない。

――オープン時から大変ユニークな取り組みをしていると注目していたが、さまざまなノウハウが蓄積されている様子が分かった。

《渡久地》 夏の格安プランは週刊レキオで六週連続で宣伝する。四月に予約を入れておいたものだ。ぜひ業界人も家族連れで「マハイナ」を見て欲しい。

 また、七月二十日には「ゆがふいん」でホテルオークラと組んだディナーを出す。昨年のサミットでオークラと組んで料理を提供して以来の交流が続いている。先週、東京で打ち合わせたとき、グアムのオークラの見通しとして今年はグアムが極めて好調で、グアムが好調だと沖縄に影響が出るということも聞いている。

――あ、それは県内大手リゾートが七月の動きが全くないので、県内向けの集客を強めているという話とピッタリ合う。去年はサミットで沖縄に行けないリゾート客がドッとグアムに流れたという分析もある。それが今年は沖縄には帰ってきていないわけだ。タモン湾のリゾートホテル群は集積があり、沖縄にはない魅力になっている。沖縄とグアムの綱引きが具体的に始まっていて、県内リゾートも独自の手を打たなければならなくなって来ているということか。

《渡久地》 その通りだ。(「観光とけいざい」2001年7月15日)


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学生の考え方大きく変化

クボタチャームスクール 久保田 照子

――久保田先生は長年にわたって専門学校や観光関連業界の接遇やマナーの研修を通じて若い人達に接しておられる。最近の若い人達のものの考え方というか、時代によって変化しているものがあるりますか。

《久保田》 変化していますね。まず、自分ありき、という考えです。相手とウマが合わないとすぐ「ムカつく」という言葉が出てくる。

――え、ちょっと待って下さい。小学生ではないですよ。専門学校だから十八歳以上の青年ですよね。

《久保田》 そうです。十年以上前だと仕事とそれ以外では相手への接し方に違いがあった。特にお客様には友達とは違う応対をした。しかし、現代は普段の自分と例えば教室で授業を受ける自分が全く同じ。外に出ていくときの服装と、家に帰ってからと、寝るときでは服装は全く違うでしょう。いまは外出するときの格好と寝るときが同じなんですよ。学校に起きたままの格好で出てくる。

――それはしかし学力とは別の問題ですよね。

《久保田》 学力とは無関係です。数年前までは潔癖性というような学生もいたけど、いまは女の子でも何日も同じ服を着ている子がいる。家の掃除ができない、学校でもゴミを拾わないので、私の授業はそれを直すところから始まるんです。

――改善されますか。

《久保田》 三カ月かかります。四月からの学生が今ごろだんだん分かってきた。アンケートを書いてもらったら服装や掃除、授業の態度など初めて聞いたので驚いたという反応です。これはこの十年での傾向です。

 時と場所、目的に応じて服装や言葉、応対を変える、仕事とプライベートを分けるということが分からない。「社会に出て仕事をするときには言動の全てがお給料なのよ」というところから始まります。

――それは十八歳くらいの若者共通の傾向か、それとも学校によって違うのか。

《久保田》 違います。看護学校でも教えますが、こちらは実習をしながら、目的もはっきりしているので講義を受ける態度そのものが違います。一時間五十分の授業を真剣に聞いています。すでに仕事をしているので患者に対して何が必要なのかを常に考えて反応しているからです。

――では、観光専門学校には厳しさがないと。

学校は教え、会社が育てる 採用企業は方針徹底すべき

《久保田》 最初は厳しさが分からないですね。漠然と旅行に行きたいから観光専門学校に入るという人がほとんどでしょう。しかし、実習を経験するとだんだん分かってくる。看護婦は患者が心地いいことは何か、どこが痛いのかすぐに対応しないといけない。観光でもお客が喜ぶこと、困っていることに素早く対処することが求められます。

 学生もわがままですが、お客はお金を払って来ているんだからよくしてもらって当たり前と考えるからもっとわがままかも知れない。すると自分のイメージとは違うといってやめていく学生もいます。

――それでも二年学ぶと知識を得て希望を胸に就職する。一方、採用側は専門学校を出たのだから必要なことは分かっているだろうといって採用する。

《久保田》 専門学校を出ると知識はあるんです。必要な知識は頭には入っているけど、なかなか実行に結びつかない。いわれたらやるけど、いわれなければやらない。だから最初は会社の先輩がしばらくは身を以て指導して欲しい。やればできるんです。

 会社は仕事の進め方、スタイルやカラーを専門学校の卒業生に最初に言っておくべきです。「知識」と「できること」とは別です。やはり能力は会社に入ってから継続した仕事を通じて身についていくものです。職場によって仕事の仕方が違うはずですから、企業の方から自分の会社の方針を打ち出して欲しい。専門学校の卒業生は何も教えなくても即戦力だというのは違います。しかし、企業のやり方さえ飲み込めばいまの学生は対応できますよ。

――人材育成というのは言葉はよく聞きますが、難しいですね。

《久保田》 教育とは「教える」「育てる」です。学校では教えています。育てるのは会社です。それに対して何らかの障害があれば県などが人材育成の支援をすべきです。

――インターネットがはやってかえっておかしなことも起こってますよ。電話の方が分かりやすいのにわざわざインターネットでパソコンのキーボードをたたかなきゃならない。僕はあと二、三年でインターネットは全部テレビ電話に取って代わって、結局、画面を通じて人と人とのコミュニケーションが重視されるようになると見ています。

《久保田》 そうでしょう。そこでは相手に好印象をあたえる表情や服装や感性がますます重視されます。

――TV電話で表情がくらいホテルのフロントのお嬢さんにものを尋ねるより、明るい人のところに人気が集まります。お客にパソコンのキーボードを操作させるいまの予約システムのようなものはなくなりますよ。

《久保田》 コミュニケーションがあって初めて世の中が回り始めるんです。それがこれから本当に求められてきますね。(「観光とけいざい」2001年7月15日)


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競争相手多く沖縄厳しい

沖縄都ホテル社長 福田靖正

――福田社長は六月に沖縄都ホテルの社長に就任するまではずっと旅行社の営業が長い。近畿日本ツーリスト入社後、関東営本営業第二部長、九州営本部長、取締役国内旅行部長、取締役総務部長、直近では取締役企画部長兼統合準備室部長だった。

 このインタビューは昨年来沖縄観光の伸び悩みが顕著で、その要因も様々であることから、なるべくたくさんの見方を示して次の戦略を練るためのヒントにしたいというものだ。沖縄の人気の失速というものを感じるか、全国はもっと厳しいと報道されている。比べてどうか。

《福田》 沖縄は観光地としては恵まれている。これまで北海道、沖縄、九州を並べてHOKと呼んで日本の比較的長距離の観光地として旅行社各社が力を入れてきて、実際に人気があった。その中で九州が少し地盤沈下している。シーガイアは特例だが、ハウステンボスやスペースワールドが苦しい。

 それに比べて北海道は有利だ。樺太やロシア沿岸地域が観光を開放しない限り、競争相手が国内・近隣東南アジアにいない。

 一方沖縄は近間に似たリゾート地がたくさんある。グアム・サイパンは大きな競合相手だ。また、台湾、フィリピンも安定してくると競合相手になる。

 全日空が東南アジアに年間六十日限定とはいえ、二万円のバーゲン型運賃を設定した。この動向は沖縄にとって近隣のよく似たディスティネーションと一層の競合を促進し、ウィークポイントとなる。構造的にはこれが一番大きな問題だ。

――ハワイやバリ、タイ、マレーシアとも競合する。

《福田》 かつて新婚旅行といえば南紀白浜という時代があった。それが宮崎に移り、沖縄が取って代わり、その後、ハワイに移った。いま、新婚旅行先は全世界に広がっている。修学旅行が同じようなプロセスを辿り、一般の旅行もそうなって行くのが見える。

――国内では沖縄は恵まれているが、海外との関係では不利だと。

《福田》 長期的には危険がある。手を打つべきだ。沖縄という島をどうしたいのかが一番の問題だ。沖縄をどう作っていくのか、観光で生きて行くならどのように取り組むのかということだ。

――次の沖縄振興策では産業政策の第一に観光が取り上げられ、国民の保養地にするという内容だ。

《福田》 お客は常に変化してきた。これまでの団体という形態はもはやなくなってきているし、消えてしまうだろう。沖縄でゲーミングという考えがあると聞くが、その方向に行くのか。

――やっと議論できる状況になったというところだと思う。しかし、ゲーミングが観光の本筋ではないと思う。

《福田》 島を挙げての特徴をどう作っていくかが最も大切で基本的なところだと思う。ホテルだけを造って、あとは何もつくっていないのは問題だ。北陸の巨大温泉ホテルが、ホテルの中の施設を強化して、ホテルの中で全部やってしまった。お客は街にでなくなり、街がさびれた。その結果ホテルも立ち行かなくなった。

 本来、街そのものが挙げて旅客を受け入れるのがいい。ハワイにはこのようなところがある。いまの人達が街をどう作るかだ。それをしないと街が死んでしまう。

沖縄挙げての特徴つくれ 元気な都ホテルを再生する

――その話は大変分かりやすい。われわれもリゾートタウンのような集積が必要だと考えている。しかし、さまざまな制限があって集積が出来ない状況だ。

《福田》 北海道はまだ得をしている。敵がいないことと同時に危機感も持っている。先ほどのバーゲン型の海外ではないが、もし、ヨーロッパが身近なものになったら、北海道も新たな戦略が必要になる。

 人が旅をしたがる何かがその目的地に必要で、どこの観光地にも基本的なものがある。それを一つ一つバラバラに出すのではなく、ストーリーをつけて行くことだ。

――夏の沖縄が苦戦しているというのはホントか。

《福田》 苦戦してます。全国の旅行社に夏の沖縄は心配ないという油断があったという感じだ。昨年は有珠山の噴火で北海道が後退したので、今年は各社が一斉に北海道キャンペーンをはっている。沖縄はそこそこ行くだろうと見ていた。しかし、苦戦しているのは割高感があるのではないか。近隣海外では例えば韓国は二泊三日二万七千円というポスターが駅にいっぱいだ。特に大阪はサラリーマンの給料が大きく下がっていて、沖縄に割高感があると思う。

 USJは大変な人気だ。ホテルが開業したばかりだが、予約で毎日満室状態だ。つまり、全体のパイが増えない状態でUSJや秋の東京ディズニーシーがオープンするとそこに人が向かいい、従来の観光地に影響が出る。

――都ホテルそのものはどんな戦略を持って臨むか。

《福田》 まず元気を出すことを考えている。信用を取り戻し、それまでに築いてきた都ホテルを取り戻す。

――具体的には。

《福田》 自分たちの働き具合を見ていただく他はない。目新しいことはかえって避けるべきだと考えている。そしてお客様の気持ちを待ちたい。

 社内的には従業員みんなと話をしたい。先日の就任挨拶ではあまり複雑なことをいう時間もないので一つだけ「磨く」ということだけ覚えてくれ、といった。昔、オークラの社員が必ず小さな手拭いを持っていて、気がついたところを磨くということをやっている。自分の大切なものを磨いてくれというのは文字通りホテルを磨くこと、もちろんものだけでなくシステム、ソフト、装置、そしてできれば自分自身を磨いて欲しいと思う。これからもそれを言い続けると思う。

――ホテルは元気であるべきです。それと社長の就任期間が最近は短か過ぎるのではないか。

《福田》 もちろん、長期計画やビジョンが必要だ。しかし、それをつくるのはここに住んでいる人達の思いを具体化するものでなければならないと思う。長期ビジョンができれば私が技術的にあるいは社内的にも動いて具体化していく。これは必ずつくらせる。すでに都ホテルは建築三十年となった。次の十年には建て替えも必要になるかも知れない。リゾートに進出するということもあり得る。社員も高齢化すると次の展望が開けるような長期計画が必要だ。沖縄都ホテルの社名は沖縄観光開発ですし…。(「観光とけいざい」2001年8月1日)


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観光伸ばす環境を整えよ

ザ・ブセナテラス総支配人 岡庭正治

――昨年来、沖縄観光の不透明感がズーッと続いている感じだ。この不透明感は何でしょう。

《岡庭》 最終的には民間企業の自助努力だが、その成果が効果的に出てくるように環境を整えるのは行政の仕事だと思う。

 いま行政側が観光客やコンベンションを誘致するスタンスにない。そのことは結果的に民間の活動を鈍らせている。誘致を促進するためのトリガーの役割が必要だと思う。

――具体的には何か。

《岡庭》 例えばレンタカーが増えているが、車はほとんど県外からの仕入で、本土に県内消費が吸収されてしまう。レンタカーの総量規制も場合によっては考えるべきだ。つまり、地域の権益を確保した上で観光産業全体の運営を考えるべきではないか。

 もちろん、沖縄全体の観光客数を増やすという総論は正しいが、民間も行政も総論のスタンスばかりでは評論家の段階だ。ここに私の強い危機感がある。

――レンタカーはここまで伸びて、もはや観光業界にとって欠くことはできない。しかし、本来お客を案内しなければならないところを、自分でホテルまで行ってくれるんだったら手間がかからない、という考えがあるとしたらかえって不親切でしょうね。

《岡庭》 旅行商品についているというだけでレンタカーが増えている可能性がある。ブセナでも空港からレンタカーでチェックインして滞在中全く利用しない宿泊客は多い。これでは手抜きだ。本来ならリムジンでの送迎が親切。そうすればお客は運転しないでもいい、事故のリスクもない。レンタカーの需要があるから増やすというのではなくタクシーやバスも含めてどうあるべきかを先に考えるべき。レンタカーの交通事故というのも結構ある。お客にリスクを負わせるような環境でなく、お客のリスクをヘッジしてあげるのが、本来の業界の役目だと思う。

――このインタビューでレンタカー協会の仲村富吉会長も県の総合的な交通体系の中でレンタカーやバス、タクシーのあり方を考えるべきだといっていた。しかし実際には考えられてないようだし、同様にイベントも毎年同じ中身で変化がない。

《岡庭》 今年はブセナの一人勝ちだが、それだけのことをしてきた。自助努力したという自負がある。リピータの比率が三〜四割になって表れている。イベントの効果やコンベンションも県の努力とかインセンティブでどれだけ入ってきたか分からないでしょう。

――平成十六年までに政府が沖縄で開催する会議のリストがあり、多くは県やOCVBが誘致したというものではない。

《岡庭》 トヨタの世界大会が開かれるが、これもトヨタ自身が沖縄でやりたいと決めたものだ。こう見てくると県の誘致努力によるコンベンション開催は少ない。だから観光については非常に危機感を持っている。このままではじり貧だ。

――何でそんなことになっているのか。

観光が自立する過渡期 不良債権処理は慎重に

《岡庭》 良い悪いは別として西海岸の場合、ホテルの最高意志決定者である総支配人が数年ごとに替わっていく。これでは長期的な戦略が出せない。次のステップにつながらない。結果として地域性のようなものをあまり考えない。

――沖縄都ホテルの福田靖正社長も似たようなことをいっていた。

《岡庭》 その意味で大型リゾートや航空会社の沖縄のトップの話よりも、中小ホテルの社長の方が沖縄全体のことを考えている。現実に沖縄観光をもり立てていくのは沖縄の人達だからだ。いまの不透明な状況は沖縄観光が誰かに依存していくのか、それともいつの時点かで自立しようとしているのか、その過渡期にあるのだと考えたい。

――自立というためには、何をしますか。

《岡庭》 自分たちで何ができるかを常に考えよう。ブセナの場合、いいと思ったことはすぐに実行している。会議は三十分でいい。まずやってみること、すると結果が出る。それを改善してさらに一歩進めるということをやっている。これには勇気がいる

――ブセナは好調だが、具体的には何をしたのか。

《岡庭》 総支配人がトップセールスで地域の旅行社を中心に全国行脚したというのは他にないと思う。年二回はこれをやっている。

 同時に絶えずリゾート客の視点で施設の改善に取り組んでいる。例えば、ウォシュレット。全室これにするには数千万円かかる。しかし、ぜひとも取り入れたいとサービス提供した。万国津梁館と連携してビジネスセンターを新設した。ビジネスマンのニーズにも応えなければならない。これらの改善によって開業四年目で累積損失を解消できた。必要なところに予算は投入しなければならない。

――岡庭さんはリゾートに電話はいらないというコンセプトだったのに。

《岡庭》 アハハ。さらにユーテルというワールドワイドのホテルシステムに参加していて、徐々に海外客も増えている。将来の夢はヨーロッパからのチャーター便でリゾート客を誘致することだ。開業以来、韓国・台湾のマーケティングを続けており、台湾の有力なお客が増えている。客室は夏場でも独自に提供できる態勢を整えている。

――次の展開は。

《岡庭》 離島のあり方を真剣に考えないといけないと思う。マーケットは沖縄本島から離島に移ってきている。航空会社の機材繰りも離島に向いている。

――離島に出るのか。

《岡庭》 アハハ。夢です。離島の方が面白いと思っている。行政はぜひ離島への物資の輸送コストを下げる施策を打って欲しい。とにかく不便ですから。それと、一度壊れた自然は二度と戻って来ないのだから、自然を保護するためのガイドラインを設けるべき。

 最後に、不良債権問題が沖縄にも影響してくる。その際ぜひ行政は長期的に沖縄観光にとってプラスになる企業を見極めて便宜を図るなり、やって欲しい。というのも、単に物件の転売目的で施設を買い取るという動きが出てきているからだ。本来、外資系企業が入ってきて競争が起こるのが望ましい。そのような企業なら歓迎だが、短期的なキャピタルゲイン目的の売買は制限すべきだと思う。(「観光とけいざい」2001年8月15日)


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