連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(4)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


業界の常識をうち破ること

 今年は、県内の完全失業率が一〇%を超える危険性あり

 四月には全国の完全失業率が男性で五%を超えた。いよいよ本格的な大失業時代の到来である。沖縄県でも四月の完全失業率が八・四%となり、昨年八月の九・二%に続く過去二番目の数字を記録した。

 さて、この失業率統計数値でいう「完全」とはなにを意味するのか、わかっているようでなかなか理解していない人が多いのではないか。

 一ヶ月の内、一時間でも仕事をすれば失業者とは言わないのである。

 一般的な感覚では、一日のみ働いて二日目以降、職がなければ失業であろうが、この統計では失業者にならない。実態として、潜在失業率は県内一〇%程度と見るのが妥当であろう。一般的に、失業率が一〇%を超えれば巷で強盗事件が多発しても不思議ではないが、わが沖縄県では、いたって普通なのである。

 ある意味では、失業者の面倒を誰かが見ることができる沖縄県の懐の大きさを感じる一面でもある。

 ここで重要になるのが、今後の完全失業率をどう見るかである。毎年、沖縄県では、建設業が暇になる夏場の八月ごろに失業率のピークを迎える。

 昨年の八月には過去最高値の九・二%まで上昇したが、その要因は建設業の閑散期と本土季節労働の不振が重なったからである。

 今年はどうであろうか、那覇空港ターミナル工事も終わり、夏場に建設業が忙しくなる要因は特別見られない。

 また、全国的にも過去最高の失業率に達しており、本土季節労働もいたって厳しい状況になることと予想されるのである。

 以上のことから判断しても、今年の夏場の完全失業率は、昨年を上回り一〇%を超え過去最高値に達するのではないかと懸念している。つまり、就職状況は改善されるどころか、むしろ悪化していると見るのが自然なのである。

 もし、一〇%を超える完全失業率となれば当然のことながら消費マインドが大きく冷え込むこととなる。特に、雇用不安が広がれば住宅ローンを嫌う傾向が出てくると予想され、結果、新築の住宅着工戸数が減少する可能性が大きい。そうなれば、建材、セメント、家具、家電等の消費が減少することとなり、不況感はますます広がることになる。

 今年の夏は、本当の意味での「冷夏」になるかもしれない。まさしく「ガンバレ県内経営者」と叫びたくなる心境なのである。

 「業界常識を打ち破る」ことが勝ち組み企業になるための条件

 経済環境が厳しくなれば、当然のことだが市場のパイが小さくなることを意味する。つまり、競争が激化し、従来のやり方では売上金額、利益率とも下がり、業績悪化に繋がることになる。

 そのためにも経営者は予想されるリスクを正確に判断し、正しい現状認識に基づいた具体的で且つ適切な改善策を打ち出す必要がある。

 そのポイントとして重要なことは、業界常識に囚われないことである。そこで京都にあるMKタクシーの親会社であるMK石油をモデル事例として紹介しよう。

 承知のとおり、ガソリンスタンド業界の現状は、「八割が赤字である」といわれるほどの過当競争であり、企業淘汰が進んでいる状況にある。今まさに生き残りを賭けたサバイバル時代なのである。

 わが沖縄県も本土ほどではないがその状況に大きな違いはない。このような厳しい経営環境下にあってもいたって元気な企業がMK石油である。

 MK石油の経営戦略を整理するならば、以下の7点になる。

一、  徹底した人材育成(会社に誇りを持てる社員を育てる)

二、 ファンづくり(顧客満足を徹底して追及する)

三、人事処遇(業界ナンバーワンの生産性と賃金待遇)

四、 明確な生産性基準の提示(社員一名当り月一〇〇万円の粗利益)

五、 情報リサーチ(顧客情報のデータベース化とその活用)

六、、 油外販売(ガソリン以外の商品で利益を稼ぐ)

七、 多角化(ガソリンスタンド以外の業種も関連させて商売する)

 MK石油から学ぶべきことは、ガソリンスタンド事業そのものの位置づけである。

 一般的にガソリンスタンドといえば、「石油製品とカー用品を販売する店舗」となるであろうが、MK石油ではそう単純には捉えていないのである。

 MK石油では、ガソリンスタンドを「月平均二・五回は来店してもらえる人々のコミニュティーの場」として位置づけ、人が集まるところには必ず情報がある。その情報を如何に的確に捉え喜んで貰える商品又はサービスを提供できるかが勝負であると考え、実行しているのである。

 ユニークな提供商品及びサービスを挙げれば、宝石、スーツ、家電製品、住宅、携帯電話、インターネットサービス等が上げられる。

 加えて凄いことはガソリンスタンド一店舗に一人の営業マンを配置して、店舗で入手した情報に基づき各営業マンが直接お客さまを訪問して持てる商品とサービスを提供しているのである。つまり、店舗はお客さま情報入手の場なのである。

 その結果、油外商品で販売利益の六〇%以上を稼いでおり、ガソリンスタンドがサバイバル時代を迎えた現在でも毎年、二桁代の伸び率を堅持しているのである。

 まさしく、「業界の常識」を打ち破った結果として勝ち組み企業になった事例として大いに学ぶ点はあるといえる。

 これからの時代、間違いなくあらゆる業界の壁がなくなる方向へ進むことになるであろう。

 異業種参入花盛りの時代、業界常識を如何に打ち破ることができるのか、経営者の考え方と実行力が問われ、企業間格差を生む時代なのである。

 県内の経営者の方々も頭を柔らかくして、新しい発想と新しい試みへ果敢に挑戦し、やり遂げることこそが、二十一世紀に生き残ることのできる証になると考えます。

 ガンバレ県内経営者、今後とも精一杯エールを送ります。(「観光とけいざい」99年6月15日)


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