連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(15)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


社員はトップに惚れ、トップは社員に感謝せよ

 世界で一番有名な日本企業と言えば、おそらく「SONY」であろう。戦後生まれの企業としては、世界屈指の成長企業であり、ベンチャー企業が世界企業になったお手本的企業である。最近、ジョン・ネイスという外国人著者が書いたSONYの研究本「ソニー・ドリーム・キッズの伝説」を読んで感銘を受けたので紹介したい。

 戦後の焼け野原の中、立ち上がった東京の中小企業から、世界企業が誕生するまでのドキュメンタリーで、とても興味深い内容となっている。

 人付き合いが苦手で子供のような夢を生涯持ちつづけた井深大と戦略家で交渉力に長けた森田昭夫という偉大な経営者(故人)がソニーを築いたことは有名な逸話である。が、それ以上に共感を覚えたのが、その陰で一心不乱に働いた企業戦士達の姿である。

 著者のインタビューに技術者の木原信敏は、「井深さん特有のヒラメキで突飛なアイディアが生まれると、即指示がでる。そして、侵食を忘れて開発し、イメージに近いものを製作すると、井深さんは子供のように有頂天になって喜ぶ。そんな井深さんを見るのが大好きだった。とにかくあの人を喜ばせたかった。技術者として私が一番嬉しかったのは喜んでいる井深さんを見ることだったんだ」と 昔を振り返ってしみじみと答えている。

 この純粋無垢な情熱が数々の画期的な商品を開発し、初めて日本企業の技術力を欧米諸国で認識させ、キャッチアップへの大きな原動力になったのである。世界企業をつくったのは有名な科学者ではない、本気で仕事に打ち込む技術屋集団なのである。

 

1、社員はトップに惚れ、トップは社員に感謝せよ

 弊社会長の田辺昇一が企業経営を称して「一人で始めなければ何も始まらない、一人では何もできない」とよく言うが、脚光を浴びる経営者の陰には、その人を支えつづける情熱を持ち純粋でひたむきに頑張る社員の存在が必ずあるものだ。

 一番好ましい労使関係は「社員はトップに惚れ、トップは社員に感謝する」関係であろう。その意味でも「社員は必ずしもトップのいうままになるものではない、トップの背中を見て育つものだ」とつくづく思う。このことを広く捉えれば部下社員を持つもの全員に言えることであろう。「率先垂範」という言葉があるが、上に立つ者は常に見られていることを意識しなければならないものだ。

 社員、部下に「もっと頑張れ」といって、自分は朝からゴルフ三昧、夜は飲み食いではあまりにもお粗末であろう。仮に、接待であっても、せめて大義名分は持つべきである。

 事実、弊社では社長以下誰もゴルフをやらない。ゴルフが悪いのではない、模範になることが重要なのである。経営者、幹部陣は心すべきではないか。

 いずれにしてもベンチャー企業の時代、他社以上のスピードと情熱とより多くの時間と集中力を持って企業経営の舵取りをすべきである。犬は人の七倍のスピードで歳をとると言われるように「ドックイヤー」である。皆さんの企業が「ドックイヤー」で行くのか「ヒューマンイヤー」を相変わらず続けるかは、企業存続を占う大きな分かれ目となる。

2、ベクトル一致とは何か

 「ベクトルを合わせる」ということがよく言われるが、価値観の多様化した時代では、なかなか難しいのが現実であろう。そこで、お手伝い先のトップコメントが絶妙であったので紹介したい。その企業は社内にハーリー・チームを持っており、その情景に喩えて「社員の一致団結」説明されていた。「企業経営はハーリー競争と似ている。全員が同じゴールを目指し、息の合ったカイさばきをしな ければ、まず勝てない。皆さんの息の合った頑張りを見て、いつも感謝せずにはいられない」との内容であった。

 誰かが手を抜けば船の速度は遅くなり、場合によってはバランスを崩し転覆する。企業経営においても「価値観の一致(ベクトルの一致)」と「ライバルより早く進む」は企業存続の原理原則だ。そのポイントは「厳しく楽しいチームワークづくり」にある。加えて、その本質は「マイナス要因の排除」なのである。人は本能として嫌われること避ける傾向があるが、こと企業経営の現場となれば 別人になるべきである。リーダーといわれる人は、心に安全領域をつくらず、嫌われても正々堂々と叱咤激励すべきだ。

 この厳しさと愛情を同時に持ちえる幹部育成ができるかは、トップの社風づくり如何なのである。常に社員に伝えるべきは「先憂後楽(せんゆうこうらく)の精神」ではないか。

 使えば使うほど増えるのは知恵と実力であり、仕事に対して甘く妥協すれば必要とする能力が枯れてしまうもの、先に苦労して後で楽をする考え方が理想的なビジネスライフではないかと、つくづく思う。 (「観光とけいざい」2000年6月15日)


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