連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(19)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


事業ドメイン(領域)とマーケットリーダー

 今、伸びている企業は「デフレとIT(情報技術)を味方にした企業」である。一〇〇円ショップのダイソー、カジュアルウェアのユニクロ、iモードのNTTドコモ、プレイステーション2のソニー、インターネットモールの楽天とその例は枚挙にいとまがない。

 そこで企業が考えるべき市場戦略の基本は、今後伸びる市場とはどこなのかを見極めることだ。今後、市場は大きく二極分化すると考えられる。その一つとして挙げられるのが、自分が欲しいものには、ある程度のお金は惜しまない「目的重視型の顧客層」、その対極にあるのが、徹底して価格にこだわる「価格重視型の顧客層」である。その証拠に、最近では中国製、ベトナム製と表示があってもさほど気にしない人が多くなった。もちろん製品の質が飛躍的に向上したこともその要因だが、 ブランド名よりも機能性を重視する人が増えたからだ。さらに、一部のスーパー・マーケットでは賞味期限間際を明確に打ち出し八割引きで売り出す店も出てきた。また、企画外商品を扱う「アウトレット専門店」も見られるようになった。そのポイントは、安い理由がハッキリしているほうが、むしろ安心感が得られる顧客心理を上手く掴んだ事例といえる。

1、 パラサイト族

 さて、目的重視型の高級指向顧客の代表に挙げられるのが「パラサイト族」と「高齢新人類」といわれる人々であろう。高齢化・少子化の進む日本において、その人口割合がどんどん増大してくると考えられる。現代用語辞典に基づいて「パラサイト族」を紹介すると以下の内容である。豊かな親元で成人した子供世代がリッチな独身生活を送るというパラサイト(寄生)・シングルという考え方が日本で広まっており、フランスではカンガルー世代と言われる人々のことである。簡単に言えば、 給料の全てを自分の小遣いに使える恵まれた環境にある人々のことである。ビンテージもののジーンズが二十万円の高値で売れるのも彼らの力によるところが大きい。

2、高齢新人類

 また、「高齢新人類」とは、団塊世代が代表各である。彼らは、かつて社会正義を求めて立ち上がった全共闘世代だ。その後、高度成長に取りこまれ会社人間として過剰労働をしてきた。若い頃にはプレスリーがいてビートルズもデビュー、時代が変わることを実感し、憧れをもった人々なのだ。その意味で、本質的に遊び心を持った世代であろう。その人々がもうじき定年を迎え、時間とヒマを手に入れるのである。

 この最大の人口構成率を誇る人々は、「若々しい高齢者」として時代、ファッションを先導するマーケット・リーダーになる可能性が大きい。つまり、仕事が忙しくてなし得なかった若かりし頃の憧れ、夢を取り戻すべく、カネと時間を自分のために惜しみなく使う人々なのである。ある意味では、先憂後楽(せんゆうこうらく)を地で行く羨ましい世代なのだ。現に、高級バイクで有名なハーレーダビットソンの購入者の中心層は五十代といわれている。

3、事業ドメイン

 そこで、企業が経営戦略、市場戦略を構築する場合、まず重要なことは「事業ドメイン(領域)の決定」である。簡単に言えば「既存事業で十分なのか、もし不充分であれば新規事業開拓をどうすすめるべきか」ということだ。まずは経営環境の変化を予測して、自社の既存事業の将来性を見極めることが肝心である。仮に、既存事業の成長性が乏しいと想定される場合には、新規事業の参入を計画する必要が出てくる。加えて、新規事業選定の四つの基本的な着眼点を説明すれば以下の内容 となる。

(1) 既存ノウハウ、既存チャネルが活かせる周辺分野で、有望な事業はないか

(2) 既存事業と相乗効果が期待できる事業はないか

(3) 参入障壁が低い事業はないか

 @スケールメリットが必要(参入障壁1)A巨額投資が必要(参入障壁2)Bブランド認知に時間がかかる(参入障壁3)Cコスト面で先発企業が有利(参入障壁4)D政府の政策変化(参入障壁5)

(4) 参入障壁は高いが、M&A(買収)、他社とのタイアップで参入できる有望市場はないか

 FC(フランチャイズ・チェーン)に加盟して新規事業に参入する場合などは、上記(4)の部類に入る。これからノウハウを構築するのは大変だが、ノウハウを購入するだけの資金は準備できるパターンなのである。弊社タナベ経営でも有望FCの紹介事業をしているが、「焼肉のさかい」「スーパーホテル」などがその事例である。考えようによっては、実験済みの成功ノウハウを導入する方法もリスク排除の観点からは、有用な手法なのである。

 いずれにしても、既存事業の将来性を如何に冷静に、かつ正確に分析し把握することができるか。加えて、既存ライバルも含め新規ライバル参入が予測されないか、これから伸びる市場はどこかなのかなど、的確な情報武装が勝負である。つまり、自社にとって「勝てる場」がどこであるのかを明確にすることから始めなければ「勝てる条件」は整備できないものである。その意味でも情報に対するアンテナを鋭敏にすることが肝心であろう。(「観光とけいざい」2000年10月15日)


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