連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(25)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


ソニーの人事改革に学ぶ

 日経ビジネスで、「ソニーが人事大改革へ、四十代社長を視野」と題したミニ特集記事が掲載されたが、その内容が示唆にとんでいたので紹介したい。

 ソニーは世界で約十八万人に上るグループ社員を有する大企業であることは周知のことだろう。その世界企業が、将来の社長候補の早期選択を含むリーダー育成で、大掛りな人事制度改革に踏み切る。世界で十八万人いる社員の中から三十代、四十代社員を中心に約五百人の次世代リーダー候補を選び、出井会長自らが配置転換、教育方針を決めトップ人材育成に努め、近い将来に四十代の社長を出すことを目指している。出井会長本人も五十七歳の時に常務から十四人の先輩を飛び越えて社長に就任した逆転人事の当事者であり、その辛さは百も承知だ。そして会長に就任するに当り、後輩の安藤専務を社長に指名した経緯があり、以前から模索していた「四十代社長」の夢に再度挑戦したことになる。「五百人のエリート」と言われ周囲から注目を浴び、嫉妬の対象となる中堅社員が辛い立場に置かれることは想像に難くない。

 ちなみに、ユニクロ現象とまで言われる「ファースト・リテーリング」などは、新任常務の年齢は、三十七歳、三十五歳、三十二歳と極めて若い。やはり、グローバル企業は組織編成にも違いが見られる。

1、トップ候補生

 今回の人事制度改革で「エグゼクティブ・ヒューマン・リソース・コミッティー」と名づけたトップ候補生育成システムの特徴を挙げると以下の四点だ。

(一) 委員会メンバーは、出井会長、安藤社長、徳中副社長の三人と人事部門の役員や部長クラス数名で構成する小人数編成であること。つまり徹底したトップダウン方式だ。

(二) 候補者は、職歴や実績、コンピテンシー(行動特性)で判別すること。徹底した実力主義であり、学歴などは考慮されない。

(三) 候補者は、毎年評価して入れ替えを行う。結果として、毎年、真剣勝負となる。ただし、それ以外の十七万九千五百人のモラールが落ちないようメンバー・リストはトップシークレットにする。

(四) なによりも特徴的なのは、これからの経営者の必要条件を「能力と体力」と明確に位置づけ、徹底して年功序列を払拭したことにある。もしかすると社員数十八万人の巨大企業のトップ以下役員陣が、全員三十代、四十代となる可能性だってあるのだ。どこかの天下り人事とは天と地ほどの違いだ。

2、自己浄化作用

 このミニ特集記事に触れて衝撃を受けたことは、これほどの巨大企業が自らの浄化能力を持ち得ることだ。一般的に人は、他社、他人を批判、批評することは得意だが、自社、身内、自身には甘くなる傾向が往々にして見られる。例えば、県内の大手企業、公務員を見ても、時代に適応した改革を実施したいと考える人は、ほんの一握りの人にしか過ぎないだろう。確かに、入社時点では、競争に打ち勝った優秀な人材だが、組織に同化することで単なる「頭(あたま)、良し子さん」になってしまい、結果として、過去は優秀だったが、今では保身が第一優先順位の「錆(さ)びたナイフ」になっている人が多いのではないか。

 過去は、肉だって切れたが、今は錆びついて豆腐さえ切れないことだってあるのだ。その結果、総合事務局で発生したカラ出張事件など、なんとも情けない行動をとる人だっているのだ。使命感のかけらも見られない、公務員の風上にも置けない「腐ったナイフ」と言えよう。

 加えて、ソニーの人事改革に感心したのは、その配置転換にある。最近の人材育成で、「これからは、専門性のある社員を徹底して育成すべきだ」とよく言われるが、このことへの警鐘でもある。

 私の考える人材育成の理想像は、「バランス感覚があり、価値判断レベルが高く、志(こころざし)の高い社員」の育成だが、その路線にマッチしていることだ。例えば、候補者の中で、営業成績は抜群だが財務の経験がない候補者の場合、財務が勉強できるポジションに配転する。また、マンネリを避けるために、同じポジションに長く就かせず、新規事業分野などに挑戦させる。これらは、単なる「専門バカ」にしない人材育成方法のヒントになると思う。いずれにしても、成長する企業になるためには、「自己浄化作用」を持つことがポイントであることを示唆した事例として賞賛に値する。 (「観光とけいざい」2001年5月15日)


 |  連載26 |  HOME |
本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は沖縄観光速報社に帰属します。
Copyright (c) 1996 Okinawa Kankou Sokuhousya. No reproduction or republication without permission.