連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(26)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


デフレは良いのか、悪いのか

 マクドナルドの平日六十五円ハンバーガー、吉野家、松屋の二百九十円牛丼、リンガーハットの三百八十円長崎ちゃんぽん、JASの一万円バースデー航空券、ユニクロのカジュアルウェア、ダイソーの百円ショップ等・…あらゆる商品、サービスの価格が低下して、消費者物価指数は九九年から確実に下降傾向を続けている。そこで問題になるのが「デフレは、良いことなのか、悪いことなのか」 だ。もっと言えば「誰にとって良くて、誰にとって悪いのか」であろう。素直に考えて生活者の立場で言えば歓迎すべきことなのに、専門家の間では「デフレスパイラル」と称して、危機的状況であるとの懸念が広がっている。そこで簡単に「デフレスパイラル」について確認すれば、以下の内容である。

 モノやサービスの価格が下がることで、企業の利益が減り、賃金カットやリストラが発生する。その結果、所得が下がり、さらに購買意欲が減退することで、今まで以上にモノが売れないこととなり、さらにモノの価格を下げざるを得なくなる。つまり、悪循環を繰り返すことでデフレが深刻化することである。らせん階段を「物価」が転げ落ちるとイメージしてもらえばよい。ここで「デフレス パイラル」が良いか悪いかの判断基準は、「賃金カットとリストラ」が発生するか否かである。単純な話、業績が安定し賃金カットもリストラも発生しない企業とそこに属している社員にとって、「デフレスパイラル」は相対的に実質賃金が増加したことになり、その恩恵にあずかれるのである。

1、賃金カットとリストラ

 その視点で県内の状況を見た場合、「賃金カットとリストラ」は総じて県内大手企業に多く見られるように思う。例えば、NTTの大型リストラ、JAの県一JA構想の来年四月スタートに伴う組織構造改革、建設関連企業の公共工事低迷に伴うリストラの検討、県内金融機関のリストラなどが健在化した事例であろう。今後は、小泉総理が財政構造改革を推進することで国家公務員、ひいては地 方公務員までその影響がでると考えられる。

 その反面、県内企業の九九%が中小企業であり、賃金カット又はリストラを推進しているかと言えば、比較的少ないのが実情であろう。むしろ、人はいるものの人材に乏しく、育成しては退職又は転職するなど抱えている問題の軸足に若干の温度差が感じられる。いずれにしても、「デフレスパイラル」の本質を画一的に捉えると、なかなか実感が沸かないのが現実であろう。よく事例に挙げられ るユニクロ、マクドナルドは企業も社員も困っていない。なぜなら、商品の価格破壊は進めている反面、賃金を上げながら業績面でも成長を続けているからである。

 加えて、もう一つの視点として抑えるべきことは、デフレの定義に土地と株の下落は計算に入っていないことだ。一般的に「資産デフレ」と呼ばれるものである。個人で言えば住宅ローン、企業でいば金融機関からの借入などの債務を多く抱えていると厳しい状況になることは現実だ。資産の価値は下がるのに借金は一向に減らないから、相対的に借金が増えたことと同じことになる。重いリュッ クサックを背負っていると、後ろに倒れてしまう可能性が大きいと言える。基準で言えば、年商の三〇%、利益の十倍までの借金が安全地の目安であろう。このことは、売上高経常利益率を三%に設定すれば同じことである。いずれにしても、復元可能な範囲で借金するのが原則である。コップを斜めにしたことを想像すればよい。元に戻る傾斜角度が必ずあるものだ。復元範囲を超えてコップを斜めにすれば、そのままコップは倒れてしまう。つまり、企業だって限度を超えて借金すれば倒れる危険性は極めて高いのである。

2、企業選択基準の変化

 これからの時代、サラリーマンが企業を選択する基準を示せば以下の三点にまとめられる。

(1) 企業規模の大小よりも企業の成長性に主眼を置く

(2) できるだけ借金の少ない身軽な企業を選ぶ

(3) 経営者の経営姿勢と経営ビジョンと人間性に着眼する

 先にも述べたように、成長する企業に属すれば「デフレスパイラル」は生活を豊かにする味方になれど敵ではない。例えば、ユニクロの柳井氏が実家の紳士服店に戻った十七年前は六名の社員、その後五名の社員が辞めて残った二名で始めたのが現在のファーストリテーリングである。その意味でも企業の大小よりも成長性に着眼して、その立役者になりデフレの恩恵を享受して生活レベルを向上 させるのが、これからのサラリーマンのあるべき姿なのかもしれない。 (「観光とけいざい」2001年6月15日)


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