連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(27)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


あなたも会社を変えられる

 小泉内閣が発足して初の国政選挙となった第十九回参院通常選挙は、自民党が改選六十一議席を上回り、百二十一議席の過半数を単独で突破し、自民党の大勝になった。小泉首相が「聖域なき構造改革」を謳えば、国民も痛みを伴う改革に果敢に挑戦しようという気運さえ感じるほどだ。その状況の下、先月十四日のNHKスペシャルでは「あなたも会社を変えられる」と題した特集番組が放送された。テーマ・内容は以下の通り。

 変革の時代に、安泰と言える企業はもはや存在しない。硬直化した風土・体質を変えなければ、会社は生き残れない。「会社を自らの手で変えよう」と社員が動き始めた。会社の何が悪いのか、どうすれば変わるのか、変えるのはどんな人たちか、企業現場の取材を交え、スタジオで自ら行動する社員たちが本音で語り合った。参加したのは三菱自動車、東京電力、トヨタ自動車、キリン飲料、しまむら、松下精工などの大企業のサラリーマンに加え、三重県庁の職員と多彩。全員が一般社員の立場でありながら大きな組織を変えた逸話の持ち主だ。以下、簡単に改革の内容を紹介する。

1、出すぎた杭は打たれない

 沖縄電力の五十倍の規模を誇る東京電力でのこと。コンサルタント会社から転職した入社三年目の社員が、軽い気持ちで社内メールに硬直化した組織体質の批判を書いた。これまでなら社員七万人の企業、役員から上司が叱られ、メールを出した本人はその上司に問い詰められて組織人として苦しい立場に追いやられるのがオチであろう。ところが若手を中心に賛同のメールがこの指止まれと言わんばかりに相当な数集まる。とうとう会社も無視できなくなり改革へと踏み出すのである。

 面白かったのは、司会が「出る杭は打たれると言いますが、気まずい立場になりませんでしたか」と質問すると、「出すぎた杭は打つことが出来ません」と平然と言ってのけたことだ。

 また、愛知県にある松下精工では、消費低迷で製品の売上が伸び悩み損益バランスを崩し赤字に苦しんでいた。そして会社が導入した制度がFA(フリー・エージェント制)である。社員は五十歳になると役職を返上し、後輩に道を譲る「五十歳役職定年制」のことである。五十歳以上の社員は、各自の経験を生かし新規事業を立ち上げる仕事に専念する。FAと言えば聞こえはいいが、社員にすれば大変なこと。いままでの苦労の甲斐あって、そろそろ部長級で楽しようかという時に新規事業開発担当の一般社員に降格されるのである。戦意喪失すると思いきや、追いこまれた年長社員たちが新規事業で会社の窮地を救い、堂々たる黒字企業に変革させたのである。あるものは今までの技術力を生かし「技術指導コンサルタント会社」を起こすなど、軽やかで爽やかさまで感じた。

 また、三重県庁の生活部での改革を紹介すると以下の内容。当該県庁では、部長以上になると個室と秘書が与えられ、職員のステータスになっているのが通常であった。ところが、生活部では、個室はおろか個人の机まで無くした。出勤すると個人のサイドケースを押して好きな机に座るのである。つまり、今までなら部長が座っていた入り口から一番遠い席に、朝一番で出勤した職員が座るのだ。会議などはオープンスペースで本音で語り合う自由闊達な雰囲気の中、結果として改革の気運が高まっているのだ。

2、救世主社員

 また、キリン飲料では、四年前、コーヒー飲料がピーク時の四〇%弱まで売上が下がり、業績低迷に喘いでいた。その状況の中、親会社のキリン麦酒から出向し商品開発部に配属になった一般社員がいた。どこでもそうだが、広告代理店、缶メーカー、材料調達会社などと個々に取引しており、一緒にプロジェクトチームを組むことはない。つまり、互いの情報交換なしにバラバラに商品開発していることが多いのである。ところが、彼は、会社の商品開発体制を憂い、無断で協力会社を巻き込んで商品開発のプロジェクトチームを立ち上げる。会議室も使用できない状況下、斬新なアイデアを出し合いコーヒー飲料の開発にこぎつける。そして役員会にプレゼンテーションするが却下。それでも諦めず、チームを引き連れ街頭に出てアンケートを取り再度提案、それでも役員会は却下。なんと役員会に五回もプレゼンテーションを繰り返すのだ。最終的には、トップがその情熱に負けてゴーサインを出した。そして出来あがったヒット商品がコーヒー飲料の「ファイヤー」だ。今では、その成果が高く評価され、その後の商品開発方式を一変させたのである。

 いずれにしても、この特番を見て感じたことは、社員には大きく分けて二つに分類されると言うことだ。一つは「会社が自分を守ってくれている」と考える「完全依存型社員」、もう一つは「会社を自分が守る」と考える「主体的改革型社員」である。右肩下がりの経済環境下にあって、右記の事例は、表向きお利口さんの「完全依存型社員」の集団では、企業存続は危ういことの証明であろう。特別な才能を持った社員が企業を変革するのではない、強い思いを持った社員が変革させるのだ。本気になれば、あなたも会社を変えられる。 (「観光とけいざい」2001年8月1日)


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