連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(28)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


国民の痛みは、県民の痛み

 三菱総合研究所顧問でマクロ経済分析で著明な高橋乗宣(たかはし・じょうせん)氏とサンデープロジェクトなどの番組で金融業界に対する厳しいコメントで定評のある国際エコノミストの水野隆徳(みずの・たかのり)氏の二人が徹底討論した「小泉改革でこうなる!日本経済」と題した書籍が出版され、その内容が示唆に富んでいるので紹介したい。

 我々の多くは、小泉首相のいう「国民の痛み」をただ漠然としか捉え切れていないのが現実であろう。興味はあるが情報が複雑で現実的にどうなるのかまでは見えていない。例えば、これから増加する失業者数の予測を取ってもしかり。政府の試算では失業者が三十〜四十万人、各シンクタンクの予測は百万人から二百万人までの幅で発表されており、情報格差がありすぎて実際のところどれが本 当なのか検討もつかない。

 そんな国民の素朴な質問に答えるべく、気鋭のエコノミスト二人が出した答えが、なんと「失業者三百万人増、完全失業率八%」というから驚きだ。自殺者が交通死亡者の三倍と言われて久しいが、仮にこのような結果になれば、ますます増加の一途をたどり、強盗などの凶悪犯罪が続発し、治安の良い国家はもくずとなる可能性だってある。全国の完全失業率が八%を越えれば、過去の数値から 判断して沖縄県の完全失業率が一三%を超えることも予想に難くない。

1、変革ではない、革命に等しい

 断っておきたいのは、二人の著明なエコノミストは、小泉改革を否定しているのではなく。むしろ、総じて肯定しており、支援意見まで述べている。本の帯の言葉を借りれば「今やらなければならない。しかし、やれば大失業、大倒産時代になる」と言いきっており、我々に警鐘を鳴らしているのだ。

 また、印象に残った言葉は「小泉内閣の政策は、改革ではない。革命に等しい」とまで言いきっている。弊社でも年末に経営者、幹部向けセミナーとして、恒例開催している「経営戦略セミナー」というものがあるが、その中でも二〇〇二年が企業経営における最大のターニングポイントの年になるとの判断結果が出ている。

 承知のことであろうが、ここで簡単に小泉内閣の政策のポイントを確認すれば以下の内容。@「不良債権の早期解決」既存の不良債権は二年以内、新たに発生した不良債権は三年以内に処理。A「財政投融資の改善」財政投融資の出口である政府系金融機関を一本化。B「道路特定財源の見直し」自動車取得税、ガソリン税を道路だけでなく環境やその他一般財源としても使用。C「公社公団の民 営化」民間でできるものは民間に移行又は廃止。D「地方交付税の見直し削減」地方の財源が減少。

 以上の内容に加え、予算面では国債の発行額三十兆円、ムダな歳出五兆円の削減、重点分野へ二兆円の投資と「三○・五・二」の枠組みを設けている。いずれにしても、これらの内容は、端的に言って「自主財源の少ない地方が苦しくなる」ことを意味する。このことは公共工事依存度の高い沖縄県も例外ではなく、むしろ直撃状態なのだ。

 現状でも、日銀那覇支店の調査で、不況にあえでいる本土大手ゼネコンが、今まで見向きもしなかった一億未満の工事受注にも参入しており、県内主要建設業の工事受注額が前年比で四月二五・七%、五月三四%、六月三五・五%と大変な落ち込みとなっていることを発表した。この状況は普通に考えて、ますます厳しくなると考えるべきであろう。

 そのような状況下、「提案勢力」と称した「抵抗勢力」が、しきりに財政出動を提唱しているが、当然の意見具申と取れなくもない。いずれにしても、内閣支持率が高水準を維持している以上、すべては無理にしても、大筋では改革が断行される可能性は高い。企業、個人の例外なく、歯をくいしばる必要がある。「座して死を待つ」よりも、時代に挑んで勝ち抜ける他に道はないであろう。

 

2、一億総中流階層の終焉

 右記の内容に照らしても、一億総中流階層といういい時代は終焉の時を迎えている。明るい未来を迎えるために一旦は未曾有の大不況を迎えるとすれば、それ相応の覚悟が必要となる。ある意味、これから迎える可能性のある「平成恐慌」は、「昭和恐慌」よりも恐ろしく、人々に与える心理的ストレスは、その比ではないかもしれない。当時は、ほとんどの人が貧しく、裕福な人は一握りであっ たから我慢もできた。

 今回の場合、自分の家計は火の車で四苦八苦して生活しているのに、隣の家庭は海外旅行に出かけるなどの現象になろう。そうなれば、生活者へ与える心理的ストレスは計り知れないものとなる。そうならない為にも、まずは情報を正しく入手し、自分なりに考えてみることから始めるべきであろう。安閑とするのは勝手だが、いざとなって騒ぐようでは問題。「悲観的すぎるぐらいに準備して、楽 観的に行動する」がこれからの時代のセオリーではないか。このことは、国も地方自治体も企業も個人も同じこと。「時代を見、時代を読み、時代を掴む」ことが厳しい時代を生き抜く必須条件となろう。その視点を持てば、案外、情報のほうから飛び込んで来るものだ。 (「観光とけいざい」2001年9月1日)


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