連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(32)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


ワークシェアリングとは

 新年明けましておめでとうございます。

 さて、昨年末に示された内閣府沖縄関連の二〇〇二年度の予算内示では、前年度に比べ九・二%の大幅減となり、中でも公共投資予算が二千八百十五億円と九・四%減となった。基地を過重負担している沖縄県であっても「聖域」は認めないとの意思表示だ。

 その反面、観光、情報、金融特区など自立型経済を目指す重点分野については、金額は少ないものの推進したいとの意向も見られ、予算配分に変化が生じているのは確実。また、経済環境を見れば準大手ゼネコンの青木建設の民事再生手続きに見られるように建設業界再編の動きも見え隠れする。一説によれば三月の年度末までに三社から五社程度の民事再生手続きが懸念されるとの声も聞く。県内企業でも大変な関心事になっており、民事再生法による倒産が発生すれば本当に困るのは下請企業であり、場合によっては清算型倒産に追い込まれる危険性をもはらんでいるからだ。その意味でも、情報に敏感にならざるを得ない年始になることは間違いない。

 また、過去十年をマクロで振り返った場合、赤字企業と黒字企業の法人所得の差引による純稼ぎ高は、赤字が二十八兆円、黒字が三十兆円で、ネットで二兆円の純益となった。十年前はどうであったかと言えば純益は十四兆円であり、なんと七分の一まで減少していると言う。

 その反面、平均年収は十年間で一・三倍になっており、結果として給与水準世界一、企業の競争力世界二十六位と矛盾した構造になっているのが現状。生き残りを賭けた企業サバイバル時代であり、失業問題が社会問題としてクローズアップされることは当然のこと。そこで最近よく耳にする言葉で「ワークシェアリング」があるが、その概要を紹介したい。

1、六タイプ

 社会生産性本部の「ワークシェアリング」の定義を見れば「雇用機会創出にむけた中長期的に実現する施策である」となっており、簡単に言えば「仕事の分かち合い」だ。

 一九七〇年代、成熟期にあったヨーロッパで広まった考え方で新しいものではない。その間、成長期にあったアメリカや日本にとっては関心の薄いものであっただけのこと。ところが、本格的な成熟期を迎え、完全失業率の上昇、有効求人倍率の低下、就職内定率の低下など、近年の雇用環境の悪化によって、ワークシェアリングが再注目されるようになったと捉えるのが順当。一般的には以下の六タイプがあると言われている。

(1) 週当り労働時間の短縮による雇用創出

 社員の時短で雇用を生み出そうという考え方であり、最も単純な方法。

(2) ジョブシェアリング

 一人分の仕事を二人で分けるという方法。例えば、午前と午後に四時間ずつとか、週二・五日ずつなどにより実施する方法。

(3) 早期退職措置としてのパートタイム化

 定年間近の高齢者の労働時間を減らし、その分を失業者に割り当てるという方法。

(4) 自発的パートタイム化

 フルタイムからパートタイムに転向し、その時短分を失業者に割り当てるという方法。

(5) 連続有給休暇時の代替要因

 有給休暇取得者に代わって失業者を雇用する方法。

(6) キャリア・ブレーク

 家族看護・介護のため、長期旅行のため、研修のためなどの無給の休暇を取り、職業キャリアを中断する者の変わりに失業者を雇用する方法。

2、わがまま集団

 右記のどの方法を採用しようとも、共通して言えることは制度的に賃金を減らす必要があることと、賞与と退職金は無いほうが導入しやすいと言う事だ。

 極論すれば、全員が時給計算で働いて、労働時間のみで給与計算がされるパートタイマー方式であれば、ほとんど問題は生じない。しかし、労働時間が短くなることは歓迎だが、月給は現状維持にして欲しい、賞与、退職金はもらいたいなどと言い出すと結果として、賃金コストのみが上昇し、相対的に労働生産性が下降するだけだ。ついては、会社が単なる「わがまま集団」になるだけのこと。経済環境は下降局面に入っているのは確実で年内は改善できないものと判断するのが妥当だろう。

 新しい年を迎え、会社と社員の双方で、企業業績と賃金コストをどうバランスさせるのか真剣に考えてみるべきタイミングに入った。賃金とは、労働をとおした付加価値の提供の対価であり、「貢献給」と認識するのが正しい。少なくとも組織にいるだけで発生する権利ではないと考えるほうが競争社会では自然だ。「生産なくして、分配なし」が当然であり、「労働生産性」が社会的に問われる年になるであろう。

 弊社タナベ経営でも年賀と称して今年度のテーマを一文字から二文字で表現した色紙を贈っているが、今年は「志」となった。最後に弊社会長の田辺昇一が「志」に込めたメッセージを紹介したい。

 「因を確かにし縁を整え、志をたてることが果報に変えられる有事即応の企業姿勢と確信します」である。

 厳しい経済環境は承知のこと、ひるまず、前をしっかり見据えてアゲンストの風に挑みたいものだ。本年も宜しくお願いします。(合掌)(「観光とけいざい」2002年1月1日)


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