連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(37)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


超低料金のIP電話

 復帰三十年を経過するが、この間モノの値段は総じて上がった。有名雑誌社の調査によれば、映画料金は七百円が一千八百円、カレーライスは百五十円が六百五十円、理髪料金は五百五十円が三千六百円、タクシー初乗りは百三十円が六百六十円…。ところが電話料金は、七百五十km超の長距離通話料で 七百二十円が四十円とかなり値下がりした。もちろん電話会社の努力によるところが大きい。

 さらに、最近になって登場したのが「IP電話」と呼ばれる超低料金電話システムが話題になっている。簡単に説明すれば、インターネットの通信方法を利用した電話システムのこと。例えば、ソフトバンクグループがサービスを提供している「BBフォン」の場合、BBフォン利用者間は無料、利用者以 外への国内電話は一律三分七・五円、さらに米国向けも三分七・五円となり、革命的な電話料金で構成されている。但し、完全に電話料金がタダになる訳ではない。基本料金三百九十円、専用機器の月額レンタル料六百九十円で、一千八十円の定額制と考えるのが妥当であろう。それでも格安であることには 違いない。

1、電話料タダ自治体

 同社は今月より、名古屋めたりっく通信、愛知県大口町と共同で、同町の全六千八百十世帯にIP電話サービスを導入した。導入に際し、同社の初期登録料三千九百八十円を無料とし、町が月額基本料金やモデムレンタル料金などを開通から二年間補助するという。結果として、会員同士は通話無料となるため、「電話料タダ自治体」が出来あがることになる。二年後でも低料金定額制の地方自治体となる。大口町内のコミュニケーションは劇的に活性化されるであろう。但し、110番、119番などの三桁電話、携帯電話、フリーダイヤルへの通話はできないので、既存電話会社の基本料金は残ることになろう。

 ただ見方によっては、既存の電話会社が長年苦労をして築いた通信インフラを利用したビジネス形態であり、人のフンドシで相撲を取っていると言われる側面もあるかもしれない。

 いずれにしても、一時代を築いたビジネスモデルが崩れ、新しいビジネスモデルが台頭してきた典型的な事例だ。いつの時代でも、どんなビジネスでも「永遠なるビジネスモデル」など存在しないことの証しと言えよう。

2、知価社会

 右記の事例から学ぶことは、多額の設備投資と多くの人を抱えることが不利になることもありえることだ。「知価社会」と言われて久しいが、「使用すれど、所有せず」の経営の原理原則に照らし合わせて見ても、設備は極力軽くし、人はできるだけ少なく、少数精鋭のプロ集団が構成できれば、最高の経営効率を追求できる出来ることを示唆している。そこで重要なことは、市場ニーズに照らして「自社オリジナルのビジネスモデル」を構築することである。

 例えば、ハウスメーカーなどが住宅展示場を持つ営業パターンで見れば分かり易い。モデルハウス建設に六千万円前後はかかる上、ランニングコストを考慮に入れれば初年度で一億円程度かかることも少なくない。「脱展示場」による販売方法のビジネスモデルを構築すれば資金運用面からしても、より効率的な経営が構築できるであろう。

3、新ビジネスモデル

 人も企業にも必ず「正念場」「土壇場」「修羅場」があると言われる。その意味では、既存電話会社にとって今が正念場かもしれない。が、手をこまねいて見過ごすわけにはいかないであろう。今まで築いてきた、高い信用力、技術力、人材力、そして強靭な資本力を持ってすれば、次の時代を切り開く「新しいビジネスモデル」を再構築できるはずだ。それだけの気概と知恵を持った人材が必ずいるはすだ。むしろ正念場だからこそ、その潜在能力が開花するとも言えなくもない。

 一番いけないことは、過去の成功体験に安住すること。いつの時代でも切磋琢磨することで人は進歩し、世の中は便利になるのであろう。その意味では、参入障壁を取り除く「規制緩和」は社会にとっていいことといえよう。いずれにしても当面の間、通信業界からは目が離せない。さらに我々をビックリさせてくれる技術確信に期待したいものだ。(「観光とけいざい」2002年6月1日号)


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