連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(38)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


エア・ドゥの倒産

 日本中がワールドカップの話題で持ちきりとなっていた先月、規制緩和のシンボル企業が事実上の倒産となった。東京と札幌の間を運航している北海道国際航空(エア・ドゥ)は六月二十五日、民事再生法の適用を申請。同社は空の自由化の象徴として九八年に運航を開始。しかし、財務体質が弱いことや、新規参入促進の規制緩和が不十分で競争力が付かなかったことが原因で経営状態が悪化した。今後は、全日空と業務提携し、再生を目指すこととなる。エア・ドゥとスカイマークは、高値に張り付いていた航空運賃 を下げ、硬直的な航空市場に競争をもたらした功績は大きい。エア・ドゥが、羽田=札幌線に三六%安い価格を設定したことで、北海道への観光客は増加した。全日空と提携しても、現在の格安路線を続けることを期待したい。

1、ドル箱路線

 羽田=札幌線は年間利用者が九百万人に達する世界でも指折りの「ドル箱」路線。そんな環境に恵まれながらも、ついに赤字経営から脱却できなかった。直接の敗因は、大手航空三社が対抗値下げに動き、エア・ドゥの利用者を奪ったこと。搭乗ゲートなど空港施設の利用条件でもハンデがあったことなどが挙げられている。

 しかし、こうした条件は、スカイマークにも共通している。同社も運賃水準の下落で苦戦を続けているが、今決算期での黒字転換にめどをつけたという。新規参入二社のうち一社が経営破たんしたことで、国土交通省が進めてきた航空自由化の底の浅さが浮き彫りになった。

 今年八月からは東京=宮崎線にスカイネットアジア航空、来年には東京=那覇線にレキオス航空が参入予定である。いまのままでは、経営的に成功する保証はない。エア・ドゥの再生法適用申請を教訓に、新規参入が円滑にできる誘導政策や規制緩和策を打ち出していくことが求められる。是非とも新規参入組が成功できるよう、今度こそ国土交通省が本気で空の自由化に取り組んで欲しい。本音と建前を使い分けるこれまでの行政姿勢からの脱却が必要な時といえよう。

2、改革特区

 政府は経済財政運営と構造改革に関する第二次基本方針を閣議決定し、その中で地域を限って規制を緩和・撤廃する「構造改革特区」の設置を打ち出した。特区を設けて規制を緩和し、成果が上がれば全国展開も視野に入れるのがその主旨。加えて、特定産業の集積で、地域の活力を引き出し、自治体が個性を競い合うきっかけにもなる。

 例えば、株式会社の農業への参入要件を緩和すれば、生産性向上や雇用の確保が見込める。反面、投機的な農地取得なども予想されるが、特区はそれらの功罪を確認できる実験場になろう。

 小泉首相は「民間でできることは民間で」「地方でできることは地方で」と訴えている。その意味でも、具体的な立案や支援体制づくりは全面的に地方自治体に任せるべきだ。民間の意見を積極的に聞いて自治体が案を作り、内閣が一元的に受理して認定する仕組みなどが必要と言われるのも関係省庁の反対を回避する必要があるからだ。

 当然のことだが、関係官庁や業界は「一国二制度につながる」として特区に反対することが考えられる。しかし、規制を緩和する地域が技術や施設などで強みを持ち、活性化が先導的な役割を持つならば、一時的に他と違った制度を適用しても不都合はない。そもそも特区とは、そうした趣旨の制度だ。情報開示や事前・事後評価などを徹底すれば、問題はないはず。特区という新手法が期待外れや骨抜きにならないよう、こんどこそ小泉首相のリーダーシップに期待したいものだ。

 今回のエア・ドゥの民事再生法の適用申請を聞いて、県が打ち出している「金融特区」「IT特区」などの政策が「自由貿易地域」の二の舞にならないことを県民として強く望みたい。その意味でも、我々県民の構想力と折衝力が大いに問われているタイミングといえよう。その為には、小さくまとまらずに大胆にかつ緻密に考え行動することが肝心だ。県民、各自が自分の意思を持ち、ことある毎に発言することが重要。少なくとも本音と建前を使い分けるといった悠長なことでは、明るい次代を切り開くのは厳しいこと となろう。(「観光とけいざい」2002年7月1日号)


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