連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(42)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


日本を追い越す勢い 中国レポート

 先月十五日から四泊五日の日程で、県内経営者との中国視察ツアーで上海と広州を訪れた。人口は十三億人を超え、世界人口総数の二二%を占める世界で最も人口の多い国。また、訪問地の上海は人口千四百六十四万人で、中国一の大都会。高層ビルの数で単純比較すれば、東京の二倍以上はあろう。いたる所で高層ビルの建設ラッシュ。半年見なければ違う都市に映るであろう変化スピードだ。

 反面、都市の発展スピードが速すぎて、道路のメンテナンスが追いつかない。路面の舗装状況は悪く、車も古くて悪い、運転マナーも悪い。加えて、慢性的な大渋滞。片道三車線なのに四車線で走る。また、歩行者は、横断歩道を無視して何処からでも横断する。さらに、逆方向に走るバイク、自転車をよく見かける。誰もが「人より先に目的地に着きたい」と考えるから無法地帯化して見える。

 ガイドに「交通事故が多いでしょう」と質問すると、「運転がへたくそな人は五年前に死んだから、事故はない」と冗談とも取れない答が返ってくる。交通マナー無視の道路状況からも中国の今が伝わる。仮に、交通マナーが良くなれば成長スピードが鈍化する時であろう。

 いずれにしても、WTOに加盟し、二〇〇八年には北京オリンピックが開催される。まさに巨艦が加速度を増して前進している。五年以内に、日本を抜き世界第二位の経済大国に、二十一世紀の中頃には世界一位の経済大国になると言われるが、加速度を増しているのであろう。

 日本で販売されている日用雑貨、家電製品、食品の大半は中国製。中国がくしゃみをすると日本が転げるような気運になってきた。中国人の商魂、強さ、バイタリティが今、まさに開花しようとしている。

1、男女平等

 共稼ぎが一般的。中流家庭の平均月収は、夫婦で四万五千円程度(三千元弱)。ラーメンは一杯八十円、レストランで中華料理とビールをたらふく飲んで食べて六百円程度。その反面、車は三百万円(年収の五倍)、マンションは内装込みで千五百万円(年収の二十五倍)以上はする。

 マクドナルド、ケンタッキーなどのファーストフードは日本よりも高い。舶来モノに対する憧れが強く、富裕層が多い証拠であろう。

 また、家事、子育ては完全に夫婦で分担。夕食のしたくは、むしろ夫の役目というのが一般的だ。

 政治は社会主義で安定し、経済は資本主義で刺激的な社会を構成している。所得格差の激しい国となった。一国多制度の合衆国を形成しており、二十一世紀初頭の経済における奇跡だ。ある意味、資本主義でありながら社会主義的社会構造を持つ日本とは正反対の国家形成をしている。今後、益々その明暗を分けることになろう。

2、女子工員

 ブライダル産業国内最大手の「ワタベウェディング」の中国工場を訪問した。社員は、約三百名、うち日本人は三名、残りは現地女性。彼女らの仕事ぶりを見て教えられる点が多かったので紹介したい。

 縫製チームを十一人単位で構成させ、その中に班長を設ける。そして品質チェック部隊を別編成し、各チームの製作したウェディングドレスを入念にチェックさせるシステムを構築。その甲斐あって、不良率が〇・六%以下と極めて優秀な生産体制を誇るまでに成長した。そのポイントは、不良品が見つかればチェック部隊の成績となり、同時に製作チームの給与が減らされる相互けん制システムとなっているからだ。

 また、各チームの時間生産性が明確に設定され、基準を超えたチームにだけボーナスが支給される仕組み。さらに、支給ボーナスの半分は班長がもらい、残りの半分を班長判断でメンバーに分配する。つまり、班長とメンバーでは十倍の格差が生じることになるから驚きだ。完全な競争社会を構成している。女子工員の皆さんは、「頑張って一枚でも多く縫製したい」「一日でも早く腕を上げて班長に昇進したい」と考えている。

 その証拠に昼食時間を十五分以上取る工員などいない。会社としては一時間の昼食休憩を奨励しているが、そんな悠長な考え方をする工員など存在しない。それでも退職者が出ないのが現状だ。皆が常に前を見て組織を構成するとは、そういったことなのかもしれない。

3、沖縄の独自路線

 著名な経済評論家で三菱総合研究所顧問の高橋乗宣氏は、最新書「日本経済の破断界」で「日本のGDPは、今後、百年マイナス基調が続く」と言い切っている。当然、日本の就労者賃金も同様に上がらないことを意味すると評している。事例に、トヨタ自動車を挙げ、二〇〇二年三月の決算で一兆円を超える過去最高益を上げながら、今年の春闘で「ベアゼロ」の回答をしたことが象徴的だと説明。

 ところが、印象深く、勇気付けられた箇所があったので紹介したい。名護市の「金融特区」を事例に挙げ、北九州市の物流特区、岐阜県の健康美容リゾート特区、門司の国際物流特区など他の特区と比較して、「金融特区」は全く別ものであり実用性が高く将来的に経済効果があると分析している。

 また、沖縄県と北海道に経済特区をつくり、南と北が活性化すれば、モデルケースとなって日本全体の活性化につながると提案している。いずれにしても、高橋氏も言うように、沖縄県は徹底した独自路線を描くべきであり、中国とのパイプをより一層強化するのが得策である。問題は、県内のほとんどの企業が零細企業であり、一企業ではそう容易ではない。それこそ、県主導で人材とカネを徹底投入し、積極展開すべきだ。現状の対中国政策では、中途半端で効果が期待しにくいと思う。 (「観光とけいざい」2002年11月1日号)


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