連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(43)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


警備産業

 「物騒な世の中になったものだ」とよく言われるが、犯罪発生データをみてもこの数年の悪化状況は顕著である。犯罪白書によると、刑法犯の認知件数は、昭和五十年以降、一貫して増加を続け平成七年以降は、五年連続して戦後最高の件数を更新。前年と比べた増加率一・二%、二・一%、六・八%、七・九%、一二・一%と急激に上昇している。平成十二年の刑法犯の認知件数は約三百三十万件、昭和四十九年と比べて百五十八万件も増加している。刑法犯の認知件数が戦後最高を更新し続ける一方、その検挙率は、平成十二年において、全体で四二・七%、一般刑法犯で二三・六%、窃盗を除く一般刑法犯で五四・三%、窃盗で一九・一%といずれも戦後最低を更新。一日当り一万件もの認知犯罪が発生している計算になる。

 今や警備産業は、市場規模二兆四千億円、一万社、四十万人の雇用を生む一大産業に成長した。「水と安全はタダ」といわれた「安全神話時代」は昔のこと。企業はもちろん一般市民であっても「安全はカネで買う時代」が一般常識になりつつあろう。

 そこで今回は、NHKの人気番組「プロジェクトX〜挑戦者達」で「勝負の警備システム作動せよ」と題され、放送された「セコム株式会社」を紹介したい。当該企業は、総グループ会社数百五十五社、社員数三万四千名、契約件数百万件、売上高二千七百億円、経常利益三百八十八億円を誇る超優良企業である。

1、ビジネス着眼

 昭和三十六年。酒屋の倉庫で在庫整理に追われる若者がいた。飯田亮、当時二十八歳。東京・日本橋の酒屋の五男坊。大学卒業後、老舗を手伝っていたが、仕事は全て兄たちに指図された。大学時代の親友の戸田寿一と酒をくすねては我が身を憂いていた。

 当時、商店や企業を狙った窃盗が横行。「プロの警備員を養成すればビジネスになる」と飯田は、戸田と二人で日本初の警備会社「日本警備保障(現セコム)」を立ち上げる。しかし、拳銃も逮捕権も無い。許されたのは警棒だけ。「お前達に何が出来る」と罵倒され、仕事は取れなかった。

 転機が訪れたのは、昭和三十九年の東京オリンピック。選手村の建設現場の警備を依頼された。さらに、会社がモデルとなった「ザ・ガードマン」というドラマが大人気。仕事の依頼が殺到し、会社は急成長路線に向かった。その時、とんでもない事件が起きた。なんと自社のガードマンがデパートを巡回中、六百万円の宝石を窃盗。会社の信用は地に落ち、倒産の危機にみまわれる。

 そこで、飯田と戸田はガードマンの行動マニュアルを作り、徹底的に研修を実施。更に警備の信頼度を上げようと、社運をかけ日本初の「機械警備システム」を作り上げた。契約先のドアや窓に取りつけたセンサーが異常を感知すると、管制センターに通報。ガードマンが急行する仕組み。しかし、誤報が相次ぎ、初年度で契約できたのは、たったの十五件、ほとんど普及しなかった。

2、転機

 昭和四十三年十月、衝撃的なニュースが伝わった。東京のホテルで、他社のガードマンがピストルで射殺され、京都でも警備中のガードマンが殺された。そして翌年四月深夜、機械警備システムを導入していた新宿の専門学校からの警報が発せられた。駆けつけたのは新人ガードマン。そこで、あの連続殺人犯と遭遇。銃弾が左ほほをかすめたが、危機一髪、犯人逮捕に至った。その後、新聞紙面で大きく取り上げられ、セコムは、その名を日本中にとどろかせ、再び成長路線に乗った。

 東京神田の雑居ビルの屋上に立てられた、夏は暑く、冬は寒い、低い屋根の七坪の狭い事務所で、友人と二人で新しいビジネスを切り開いた飯田氏の表情は、今までの苦労を微塵も感じさせない爽やかさ。

 司会者の「よくここまで成長されましたね」の問いに対し。「失敗するのは成功する前に止めるから。」「いい事業なら、成功するまで続ければ必ず成功する。」と短い言葉を視聴者に贈った。

 逆境にもめげず、可能性を信じ、常に工夫し、挑戦しつづける飯田氏の経営姿勢は、混迷時代を生きぬく全てのビジネスマンにとって大いなるメッセージになろう。既存市場の売上規模が縮小傾向を続ける今、企業経営に求められているのは、「マーケットニーズの的確な予測力」と「事業アイデアを実践できる実行力」であろう。「即決、即断、即行」が問われているのだ。〇二年も終わりますが、来年こそ、いい年にしたいものです。 (「観光とけいざい」2002年12月合併号)


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