連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(45)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


元気印企業に学ぼう

 先月の二十日から二日間の日程で、県内経営者十三名と同行して弊社主催の「関西優秀企業視察」に行ってきた。視察企業先は、工場内の粉じん測定機などを製造する精密機械メーカーの「日本カノマックス」、創業九十一年になるスポーツ用品販売大手の「スポーツ館ミツハシ」、靴下の製造から靴下専門店「靴下屋」を全国でFC展開している「ダン」の三社。いずれの企業も、市場縮小傾向にあり厳しい経営環境下にある。そのような業界環境下にあっても独自の経営スタイルを築き上げ強烈に好業績を達成して増収増益を続けていることが素晴らしい。

1、新人事・給与制度

 日本カノマックスの加野社長は、逆説的な表現で「会社は簡単に潰れるものだ」「社員は働かないものだ」と企業が元来持っている特性を短い言葉で表現した。「だからこそ、社員がどうしたら前向きに楽しく仕事に打ち込めるのか」「その環境を整備するのが経営陣の仕事だ」と力説した。加野氏は、このテーマを自問自答する中で四つのテーマに関し疑問を持ち、全て廃止した。

 @ 命令型人事制度(辞令)A年功序列B終身雇用C退職金制度、である。

 つまり、日本型人事制度を根底から否定し、同社オリジナルの「完全成果連動型人事制度」と言う新賃金システムを構築するに至る。そのポイントを簡単に挙げれば以下の五点。

 @幹部の立候補制A社員の応募制B単年度契約社員制度C成果実績連動型年俸制度D退職金制度の廃止。

 以前の年功序列的な人事・給与制度を破壊する代わりに、プロ野球のFA制度を思わせる新人事・給与制度を開発導入して組織の飛躍的な活性化を果たしたのである。

 まず実行したのが、社員が希望の職場に異動することができる職場応募制と、管理職の立候補制である。そして全社員を対象に契約社員制度を導入。「社内FA制度」の導入と同時に給与体系も年功序列型から完全年俸制に移行した。頑張ったものが報われるシンプルで公正な人事制度を導入し、全員参加型の経営を実現。厳しい業界環境に関係なく好業績を維持しているのである。但し、この賃金システムが全企業に当てはまると考えるのは早計だ。むしろ「成果とは何か」「成果と賃金は連動しているか」を自問自答して自社にあったオリジナルの成果連動型の賃金システムを築き上げる企業努力をするべき時期に来ていることを認識すべきだと言うことを同社より学ぶべきであろう。

2、スポーツ用品業界

 バブル崩壊後、ゴルフ、テニス、スキーなどの愛好家は減った。例えば、ゴルフ人口で見れば百三十万人が百万人に減少。結果として、スポーツ用品の市場規模は二兆五千億円から一兆六千億円に激減。そのような市場環境変化下の中で元気印企業として関西圏を中心に業績を伸ばしているのが「スポーツ館ミツハシ」だ。また、昨年には、東京原宿のラフォーレの向かいに出店、スポーツ用品店としては世界一の立地であろう。

 その成功要因は多岐に渡るが、その中でも社員教育にかけるトップの経営姿勢は素晴らしい。店長会議と称される幹部教育の場は、丸一日がかりで月四回、年間四十八回も開催される。その中で、トップの考え方、経営システム等を徹底して植え付けるのである。つまり、トップのビジョンを如何に社員に浸透させるかは、経営者の姿勢そのものであることを感じさせる事例だ。また、三橋氏が発した言葉で「トップを見るな、トップの見ている方向を見よ」は、ビジョン経営を端的に言い得た内容であり、今後ますますの企業成長を予感させるものであった。

3、靴下専門店

 靴下製造を生産地別シェアで見れば、中国が全体の八三%を占めており、完全に国内靴下メーカーは弱体化しており、「三足千円」は当り前の時代。そのような市場環境下で増収増益を続けているのが「靴下屋」の店舗名で知られる靴下専門メーカーの「ダン」である。全国に二百十店舗のFC店舗を配し、県内は三店舗。加えて、百貨店向けに新業態店舗「ショセッティア」を開発、五十店舗を出店。さらに、ロンドンに「ダビオ」一号店を開店し、グローバル企業を目指しているのだ。なんと最近では皮肉なことに、中国からバイヤーが来ると言う。

 さらに、同社はサプライチェーン・マネジメントで有名な企業で、ハーバード・ビジネス・スクールの事例研究でも取り上げられている程だ。開発の基本コンセプトを考えた社長の越智氏は「サプライ…と勝手に名前を付けられては困る、私のシステムを強いて言えば『サムライ(侍)・チェーン・マネジメントだ』」と言う。また、「経営は商品だ」はメーカーとして実に含蓄のある発言であった。

4、まとめ

 いずれにしても、本気で考え、実行すれば、「衰退業種だから…」の言い訳は通用しないことを、今回、視察させて頂いた全ての経営者に学ぶことができた。「自己責任の時代」と言われて久しいが、厳しい環境下だからこそ、本物の企業が浮き彫りになるのであろう。再度、自社の経営スタイルも含め総合的に見つめ直す時期ではないか。そして、県内企業の多くが、元気印企業になることを願いたい。 (「観光とけいざい」2003年2月1日号)


 |  連載46 |  HOME |
本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は沖縄観光速報社に帰属します。
Copyright (c) 1996 Okinawa Kankou Sokuhousya. No reproduction or republication without permission.