連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(47)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


経営理念は企業存続・発展の軸足

 イラク戦争の勃発と長期化懸念、そして石油の価格高騰、それに伴う生活物資の値上げ圧力、財政悪化。加えて航空運賃の値上げ圧力、景気低迷によるレジャー費の抑制、世情不安による観光客の減少予測など企業を取り巻く経済環境の不安要素を挙げれば事欠かない。「今年こそは良くなる」と言いたいところだが、なかなかそうもいかない状況である。

 そこで問題になるのが、業界を取巻く経営環境が悪化することで企業に属する人心が浮き足立つことではないだろうか。その意味において、今こそ重要になるのが企業の「経営理念」だと思う。

 理念とは「理性から得られる最も高い考え(俗に、事業・計画などの根底にある根本的な考え方)」と辞典では説明されている。経営理念を一言でいえば「企業活動のバックボーンとなる普遍的かつ高邁なる経営の志」である。別の言い方をすれば、経営者の「経営に対する考え方の集大成」であり、人生観・人間観・事業観・企業観・社会観・世界観等を統合した一つの体系とも言える。言わば「企業の憲法」だ。

 

1、経営理念とは

 具体的には、@我が社は何のために存在するのかA我が社は何をもって社会に貢献していくのかBそのために何をなすべきか、何をしてはならないか、に応えるものである。その必要性と効果を挙げれば以下の五点。

 (1)目指す企業像に向けての経営者の意志と行動を示すことで信頼性を高め、挑戦する経営風土をつくって、企業活力を増大する。

 (2)本来バラバラな人間集団を、価値観の共有により一つの方向に向かわせ強固な組織に変える。

 (3)経営活動における全ての価値判断基準および行動指針となり、的確な意思決定と適切な行動がなされる。

 (4)社員にとっても経営者にとっても存在の拠り所となり、モラールアップが図れる。

 (5)壁に突き当たったとき、曲がり角にきて転換に迫られているとき等、経営の原点に返ることで打開の糸口をつかむことができる、

 などに求めることができる。

 

2、企業の存続発展の必要条件

 超成熟化時代、構造転換期の環境下にある企業は、経営哲学を持ち、個性ある価値を発揮しない限り成長発展は期待しづらい。単に「ライバルに負けない」という競争差別化条件だけでは、勝ち抜く決め手にはならないものだ。なにゆえに我が社が社会にとって必要なのか。提供する商品・サービスが、ライバル企業のものと如何に異なるかを明示し、メッセージを送り続けない限り「勝ち組」としての企業ポジ ションは得られない。それゆえに、経営理念を基礎とした経営活動こそが、生き残りの「必須条件」となり、経営を行う上で絶対に欠かすことはできないものとなる。

 経営理念の確立なくして、いくら競争差別化条件を強化しても、それは大局的視点のない一過性の部分的な条件整備に終わり、永続発展の保証とはならないものであろう。

 @経営理念の明確化と徹底(必要条件)A品質・コスト・スピード・サービスの競争差別化条件(十分条件)の両条件が整ってこそ、どんな環境下にあってでも企業の成長発展が約束されるのである。「経営理念ではメシは食えない」といって、経営の原点を軽視して目先の利益を追い続けることは、長い目で見て心得違いと言えるのではないか。

 

3、原点回帰

 その意味でも、トップ自らが、社内外に向けてあらゆる機会をとらえ、繰り返し理念を発信し続けることが重要だ。経営理念の徹底でよく事例に挙げられるジョンソン&ジョンソンのバーク会長の「私は経営者としての時間の四〇%以上を『わが信条』を組織に浸透させることに費やしている」との言は、含蓄ある言葉として受け止めることである。

 「わが社は、何をもって顧客に奉仕するのか」、この厳しい問いかけを繰り返し、かつ理念に則った行動を続けることなくして、厳しい経済環境化での存続発展の保証は得られないと心すべきではないか。環境が目まぐるしく変化して、企業経営に迷いが出たら経営理念に今一度立ち返って根底から自社を見詰め直すしか手はない。

 「危機意識」と「単なる不安感」とは、まったく別ものだ。情勢変化に過剰反応して人心が浮き足立っては、企業経営はおぼつかない。今更ながら経営理念を機軸とする経営姿勢、つまり「原点回帰」が今求められているのではないか。そうなれば環境変化で一喜一憂することもなくなる。いずれにしても「人(材)」で築き上げた業績は崩れない。(「観光とけいざい」2003年4月1日号)


 |  連載48 |  HOME |
本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は沖縄観光速報社に帰属します。
Copyright (c) 1996 Okinawa Kankou Sokuhousya. No reproduction or republication without permission.