連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(51)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


牛肉関税引き上げ

 政府は、生鮮・冷蔵牛肉の緊急輸入制限措置(セーフガード)を発動することを先月二十九日に発表した。内容としては、関税を上げることで牛肉の輸入を抑制し、国内産地への影響を和らげようという関税暫定措置法に基づく保護対策である。牛肉の本来の関税は五〇%だが、米国、オーストラリアなどの輸出国に配慮して実際は三八・五%に抑えられている。

 一方で三カ月ごとの輸入量を合計、年度初めからの累計で前年同期比一七%増を超えると自動的に関税を本則の五〇%に戻すことになっている。先月八日にも、亀井善之農相と日本フードサービス協会など外食産業の業界団体との懇談会が農水省で開かれた。元々、BSE(牛海綿状脳症)発生後の消費回復に伴う牛肉輸入の急増で八月に発動が見込まれる関税引き上げ措置について、外食産業は「BSEという特殊事情によるもの」だとして発動回避を要請してきた。

 これに対し、農水省側は「輸入が急増すれば自動発動するルールに従って実施する」との姿勢を崩さず、議論は平行線のままとなった。

1、形式主義

 ただ今回の緊急暫定措置は釈然としない。

 輸入増は、一昨年秋の牛海綿状脳症(BSE)発生に伴う消費者の牛肉離れで昨年の輸入量が大幅に減少した結果の反動であり、BSEの発生を防げなかった農水省の失政や、その後の対応のまずさが招いた輸入増であると考えるのが一般的な解釈であろう。その意味では、原因と責任は農水省にあると判断するむきもある。

 そのことを棚に上げ、杓子定規に法を適用するというのは大いに疑問が残る。輸入量が増えたといっても、まだ二年前の水準を大きく下回っているのが現状だ。同省は関税引き上げで国内市場の六〇%を占める輸入牛肉の卸売価格が約八%上がると試算している。

 関税引き上げで輸入牛肉価格の上昇は必至であろう。このことは、輸入牛の比率の高い沖縄県でみれば、生活者への影響は避けられない。あるいは、デフレ傾向の中、消費価格に転嫁できずにステーキ専門店、焼肉店、スーパーなどの業者が泣き寝入りするか、あるいは、肉卸業者がコスト吸収するなどが考えられる。

 元々、輸入牛は利益の取れない薄利多売的要素のある商材であり、企業業績に与える影響は大きいはず。加えて、観光客にとって沖縄でのステーキに代表される肉消費は「安くて美味しい」のイメージが定着しており、少なからず観光にも影響がでるであろう。反省は棚上げして、形式主義を貫き通す農水省の施策方針には、民間感覚では正直、理解しがたい。

2、ゼロ回答

 また、構造改革の一環として規制緩和を進めることを目的に、政府が「構造改革特区推進室」を設けているは承知のことであろう。

 先月二十八日付けで、全国の自治体や民間から募った第三次提案に対する各省庁の回答があり公表した。その中で、沖縄県から提出された、石垣市の「観光ビザ特区」、名護市の「金融テクノロジー開発特区」など六提案のすべてがゼロ回答となり、全滅状態になっている。ちなみに、過去三回、沖縄側からの提案すべてがゼロ回答であり、わが県は特区提案で成立したものがないのが現状である。

 このことは、各省庁が構造改革特区に関して、できるだけやりたくないとの姿勢であり、規制主義、前例主義のもと、本音では構造改革を進めるつもりがないと判断されてもしかたがない状況と言えよう。

 例えば、名護市の「金融特区」は税制であり、今回提案された「金融テクノロジー開発特区」の規制緩和を実施しなければアジアにおける「金融センター」にはなり得ない。規制をベースとする権威主義の弊害なのである。

 いずれにしても、このたびの農水省の「緊急輸入制限措置」、各省庁の「構造改革特区」に対するゼロ回答を見ていると、政策不況とさえ感じられる。民間サイドからすると自力本願しか今後の生き残り策はない。その上、政府の政策不況とも取れる政策ミスに巻き込まれないよう理論武装する必要があろう。加えて、今年十一月に最後の「構造会改革特区提案」が予定されているが、今度こそ特区獲得を是非とも望みたい。(「観光とけいざい」第639号 2003年8月1日号)


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