連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(52)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


8月の台風一過

 今年は現時点で、台風の外れ年の様子で観光への影響も例年よりは少ないようである。加えて、六万年ぶりの火星再接近も見られ、夏休みの子供たちへのいいプレゼントとなったことであろう(十月上旬までは、観測可能)。総じて天気に恵まれた夏であったと言える。

 それでも、先月の七日早朝、今年、初めての台風が沖縄本島を直撃した。大型で強い台風十号は本島、久米島地方を風速二十五メートル以上の暴風域に巻き込み、北上した。

 沖縄電力によると、那覇市、名護市、伊是名島など本島と周辺離島の広範囲で、計六万一千三百世帯が停電したと発表があった。本島では最大風速四十メートル、最大瞬間風速は六十メートル近くまで達した。

 私も、当日は朝の五時過ぎから台風状況を睨みながら部下の出勤判断に迫られることになった。結局、バスが運休となり「自宅待機」の判断をし、連絡網を通してその旨を連絡することとなった。

 しかし、私は、レギュラー出演している経済TV番組の撮影などの都合で出勤することとなった。そこで、久方ぶりに台風が直撃して感じたことが多かったので私見を述べたい(あくまでも私見であり、反対意見も多いと承知している)。

 ホテル、空港、おみやげ品店、マスコミ、量販、コンビニなどの流通業及びその納品業者、タクシー会社、金融機関、また電力などのライフラインをあずかる民間企業など…。警察、消防、加えて一部の公的機関は通常通りの出勤形態となっている。

 たまたま、台風十号が吹き荒れるさなか市内のホテルに行く機会があり、社員の就業状況に触れたが、予想通り完全出勤状態であった。私自身、特に頭が下がったのは朝刊の配達だ。まだ薄暗い上、暴風雨。それでも、台風情報を気にして今か今かと待っている人が必ずいる。危険を承知で、風雨に打たれながらでも必死に新聞配達をしている陰の力持ちが、そこに存在した。早朝から出勤判断に迫られている私にとって、本当に有難いことだと痛感したしだいである。

1、台風は休日?

 普段は、バス、タクシー出勤が常だが、タクシー手配が難しいと判断し、マイカーでの移動にした。するとラジオから流れるDJの言葉を聴いて耳を疑った。

 「本日は『台風休み』ですから、映画館、ボーリング場は盛況でしょうね。中には、危険を顧みず彼氏の家に行こうかしらと思案している人もいるかもしれませんね。(笑い)…」と続いた。

 反論を恐れずに言えば、これを普通に聞ければ、「台風勘違い症候群」と言われてもしょうがないと思う。基本的に、台風時は「自宅待機」であって「休日」ではない。もし「休日」であれば、「休日届け」を提出すべきであろう。

 昔は、今のように移動手段がなく、家屋の倒壊などの危険性も大きかった時代である。ついては、交通手段の復旧までは手の施しようがないから「自宅待機」を指示しただけのことであろう。DJの発言は、それを、勘違いしている人がいかに多いかの証明と言えよう。

 仮に、午後三時にバスが開通すれば、それからでも出勤するのが当たり前。むしろ、十分な出勤手段を持つのであれば、出勤も可能と考えるべきであろう。今の時代、携帯電話等でいつでも連絡が取れる状況であり、昔とは比較にならないほど出勤条件の整備は進んでいるのが現状だ。

2、子供のころからの癖は抜けない

 ところが、県民の場合、小学校の頃から「バスが止まれば」休校が当たり前。中には、企業人になっても「台風が来たら休みだ」と喜ぶ「勘違い人間」も少なからずいるだろう。

 簡単に言えば、稼動しなければ社会が機能しない企業、公的機関が都合上、完全稼動しているのであって、それ以外の企業、公的機関は「休日(?)」が当たり前となっているだけのことである。その意味では、台風などの危機的状況でも稼動を余儀なくされるホテル、空港業務などの民間企業、あるいは公的機関は、そのことに対し、ある種の誇りを持っていいと思う。

 なぜなら、その民間企業、公的機関がなければ社会は機能しないことの証明でもあるからだ。ある意味、時代が変遷しても、そう簡単になくならない役割を担っているとも言えるであろう。それを、基幹産業又は基幹機能と言うのではないか。今更ながら、観光客への気配り配慮を含め、社会の機能不全を極力抑える対策を考えせられた台風一過の一日であった。(「観光とけいざい」第641号 2003年9月1日号)


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