連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(54)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


65歳定年制に見る「民間対公共」

 高齢化が急激なスピードで進行するなか、年金支給開始年齢が六十歳から六十五歳への延長とのからみのなかで、定年延長が社会的要請として、クローズアップされている。振り返ってみれば、平成十年度より六十歳定年制は努力義務から法的義務へ移行、六十五歳までの継続雇用が努力義務になるなど、定年年齢の引き上げへ向けて環境整備が進んでいる。このようななか、六十五歳定年制を視野に入れた上での人事処遇制度の改定が、論じられるようになってきた。

 先般、坂口厚生労働相も仙台での講演の中で定年延長を示唆しており、法制化されることもそう遠くないことであろう。このことは民間企業にとって、大変な問題となる。想像すれば、経営陣が七十歳前後、幹部陣が六十代、一般社員が四十代、五十代で平均年齢五十五歳の超高齢化企業を形成せよとの事であり、どう考えても重たい企業である。活性化するとは到底、思えない。

 結果として、民間企業での六十五歳定年制は極めて難しいと判断される。但し、それが出来る組織がある。それは、公共機関であろう。ここは、退職者も少なく、ある意味雇用が約束されている。そうなれば、六十歳で定年して、年金空白期間で貯金を使い果たした「貧乏な人たち」と六十五歳で定年を迎え、そのまま年金をもらい生涯に渡って「安定した裕福な暮らしをする人たち」に二分されることとなる。加えて、六十歳過ぎて年収を八百万円と想定すれば、生涯年収で四千万円の差となり、ますます不公平感は拭えない。それでも、民間企業は自助努力で、防衛策を模索する必要があろう。

1、早期退職優遇制度

 定年延長に伴う主な処遇対策としては次の六点が一般的に考えられる。

@年功給から能力・成果給への給与制度の改革
A一定年齢以上の中高齢者の賃金調整
B役職定年制の導入
C早期退職優遇制度の導入
D貢献重視のポイント制退職金制度の導入
Eカフェテリアプラン方式の検討

 そこで、退職管理制度の一つである早期退職優遇制度について考えたい。早期退職優遇制度とは、「定年後の第二の人生支援」「定年までに支払うべき賃金と早期退職割増額との関係で人件費をトータル管理する」制度である。

2、導入上の留意点

 制度の目的としては、「人件費増大の抑制策」「中高年齢層のポスト不足への対策」「企業活力低下の防止」という企業側の目的と、繰り返しになるが、「中高年齢者の独立支援」「定年延長に伴う進路選択の一環」という従業員のための目的の大きく二つが考えられる。

 後者の場合、企業内で早くから従業員の独立心・自立心を向上させるような教育システムの整備が必要となる。ある日突然「自立せよ」では、従業員のためとは言い難いであろう。ただし、早期退職優遇制度の性質上、不況・不景気の環境下では雇用調整の手段として利用されるケースが多い。

 また、雇用の流動化が進み、新卒・中途採用の社員ともに「就社」から「就職」の意識変化が進んだ今日では、雇用調整手段としての制度利用では社員の理解は得られない。

 企業にとって残ってもらいたい人材と、雇用のミスマッチを感じている人材との選別をどうするかという課題はあるが、基本的には企業の永続性を第一義にしつつ、従業員のライフプランをサポートするような制度の確立・運用が望ましい。大企業においては半数以上が既に導入済みとも言われるこの制度も、自社の実情にマッチしたより有効な制度への改善が求められる段階になったと言えよう。

 いずれにしても、六十歳定年制が六十五歳まで延長されれば、企業経営に与えるインパクトは多大なものになる。

 現在の経済環境を見た場合、実行可能なのは公務員と一部の大企業のみであろう。ますます、国のコスト負担増を意味する。ただでさえ、医療費負担率が、一割から二割となり三割となり、社会保険料率も上がり、さらに、年金支給開始年齢も延長され、年金支給額も下がる状況である。夫婦二人暮しで月三十万円は必要と言われており、実際の年金需給金額は、国民年金で四万三千円、厚生年金で十七万円、共済年金で二十一万円であり、基本的に足りない。

 つまり、貯金を使い果たした「貧乏な人たち」は、毎月赤字の状況が続くこととなる。「裕福な第二の人生」など夢のまた夢であろう。

 これ以上の我慢は許されない。抜本的な国の歳入、歳出を見直すべき時だ。それでも、企業経営の観点から見れば、法改正を睨み自己防衛策を今から組み立てておく必要があると言えよう。そうでないと、民間、公共間格差がますます広がることとなる。そろそろ真剣に考えてみる時期ではないか。(「観光とけいざい」第645号 2003年11月1日号)


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