連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(58)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


基本理念を共有できる企業は強い

 日本でダイエーが創業された頃、同じくアメリカの片田舎でウォル・マートが創業され、後者は世界一の小売業(売上二十九兆円)となった。結果として、大きく明暗を分けたと言えよう。ただし、創始者のサム・ウォルトン氏(故人)が追求したのは、事業の規模ではなく、いかに優れたサービスを提供できるかと言われており、その経営スタイルが興味深いので紹介したい。

 その根本は、ウォルトン氏が創業にあたって提唱した基本信条である「3つの信条」を基本理念に、お客様第一主義に徹したことに尽きる。

【3つの信条】

【1】すべての人を尊重する

 ひとりひとりの考えや行動を認め、敬意を払いましょう。相手を受け入れるとともに、自分が受け入れてもらえるよう努力しましょう。

【2】お客様のために尽くす

 お客さまが望まれることを先取りし、ご期待をこえるようにしましょう。

【3】常に最高をめざす

 さらなる向上をめざし、日々努力をしましょう。立ち止まることなく最高をめざして変化を続けましょう。

1、ウォル・マート・チアリング

 以上のことは言われれば当たり前と思うかもしれないが、その徹底度が業績の明暗を分ける。ウォル・マートでは、SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)と称されるITを活用した流通段階のすべての情報管理を行う経営システムの導入で有名だ。

 例えば、アメリカ同時多発テロが発生した時、通常だと日に六千本の国旗売上がとてつもなく急増した。なんと、その一日で手配し販売した国旗の数が十一万本に上るというから、その情報管理レベルには脱帽する。

 その反面、経営陣が複数で出張すればホテルは同室というからコストダウン意識も並大抵ではない。これらのことは、「一円でも安い価格でお客様へ提供する」ことの努力の現れである。

 ある講演会で聞いた話だが、ウォル・マートの株主総会もユニークなので紹介したい。体育館に一万五千人からのOBや社員が参加する。まず、ウォルトン会長の挨拶に始まり、各部門長の結果報告となる。

 そして、最後に会長が再度、登壇し「ウォル・マート・チアリング」と言われるセレモニーが行われる。日本で言えば、経営理念の唱和とイメージすると分かりやすい。

 まず「WAL MART」のスペルを一文字ずつ掛け合いするのである。そして、「ウォル・マート」を全員で百回以上掛け合いする。一万五千人からの人が音が共鳴する体育館で行うのだから、次第にトランス状態になる。

 そして、興奮が最高潮に達したころあいを見て「フー・イズ・ナンバー1」と質問するのだ。すると、全員が一致して「カスタマー」と返答するという。けっして、「ウォル・マート」とはならない。

 つまり、どんな状況にあっても「常にお客様第一主義」が貫かれていることを証明する一場面といえよう。これが世界一の小売業の真髄である。

2、東京の一夜

 話は変わるが、先月十七日より二泊三日の日程で県内経営者十二名と「関東優秀企業視察」に行った。二日目の夜に行ったレストランのサービスに大いに感銘したので紹介したい。

 経営者の高橋氏が、究極のリゾートと賞賛される「アマンホテルズ」に魅せられて、二年半前にオープンさせたホスピタリティ溢れるレストランが「カシータ」だ。大人気の店で、平日にもかかわらず店内は予約で満席とのこと。

 さて、レストランに入るなりスタッフ全員で出迎えてくれて、ウェルカム・ドリンクと称してシャンパンをサーベルで開ける演出で振る舞ってくれた。その後、高橋氏の講話を九〇分拝聴し、大変感銘を受けた。そして、テーブルに移動してディナー。席に着くとメッセージカードが置かれており、その裏には我社の社章が印刷されている。また、ナフキンにも私のイニシャルが刺繍(ししゅう)されており参った。

 加えて、スタッフ全員がお客様の名前を覚えているのに更に感動。また、その後は、テラスに出て参加者全員へのオリジナルメッセージが描かれたカプチーノを頂いた。そして、二次会へ行き、最高の気持ちでホテルへ戻った。

 すると、メッセージカードと届け物がある。何かと思いながら開けてみると、「Thank you Mr.Omine」と焼印されたフランスパンである。そう言えば、食事中に店の手作りパンが美味しいとの話題になった。

 こんどこそ、本当に参った。いずれにしても、高橋氏のリーダーシップとそれに応えるスタッフの能力とサービス精神に大いに感銘を受けた東京の一夜であった。

 この二つの事例は異質に思えるかもしれないが、本質は全く同じである。その企業の経営者が考える基本理念のもとに係わるすべての人が思いを同じにして徹底している姿である。

 一般的に「ベクトルの一致」ともいうが、要は、すべての社員が共鳴し最善の努力をすることに尽きる。(「観光とけいざい」第652号 2004年3月1日号)


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