連載 ガンバレ県内企業 勝ち組への挑戦(59)
大嶺正行(タナベ経営沖縄支社長)


差別化戦略の構築が企業の明暗を分ける

 新年度を迎え新たな気持ちでスタートした企業も多いことであろう。そこで今回は、企業経営の基本に立ち返って「差別化」について考察してみたい。単純に考えて、ライバル企業との差別化要素は「品質、コスト、サービス、スピード」の4つに大きく分類できる。あるいはその組み合わせである。各企業がその差別化項目に如何に「こだわれる」ことができるかが勝負となろう。

 

1、靴下のダン

 中国製品が一般的となり「三足千円」が当たり前の時代。国内靴下メーカーは衰退の一途をたどり八割が閉鎖を余儀なくされた。その中にあって全国に「靴下屋」と言う店舗を二百二十一店舗展開し、イギリスにも出店している優良企業が、田園風景の広がる奈良県の片田舎にある。社長の越智氏率いる靴下専門メーカーの「株式会社ダン」がそれである。経営理念にも「経営は商品」と品質にこだわる姿勢が明快だ。一月の寒い日に県内経営者十二名と連れ立って当該企業を訪れた時のこと。玄 関口で出迎えていただいた越智氏はスーツ姿に裸足だった。聞けば「靴下を履くときの鋭敏な感覚を維持するため」とのこと。商品に徹底的にこだわる姿勢に頭が下がる。

 加えて、SCM(サプライ・チェーン・マネジメント)の概念なかったころから、糸商、製造協力企業、物流センター、店舗を販売データで一元化した商品管理システムを確立させている。糸商は店舗での商品の売れ行き傾向を見て糸を染め、独自の判断で納品する。それを受けて製造協力企業は靴下の製造にとりかかる。そして物流センターに納品するのである。その後、全国の店舗に搬送される。

 つまり、「注文」と言う行為が行われないのである。まさしく必要なときに必要なものが届く「ジャスト・イン・タイム」の成功事例なのだ。品質への徹底的なこだわりと、顧客に欠品などの不快を与えないための商品管理システムに傾注すれば衰退業界にあっても、売上高八十五億円、利益率一〇%弱の高収益企業達成できるという勝ち組企業の好例と言えよう。

 

2、USマート

 また、三重県の伊勢市に本社を置き、デフレ時代を味方に成長を続けている企業がある。社長の田口氏が率いる「USマート」という百円コンビニがそれである。明治二年創業、百三十八年の歴史を誇る超老舗企業だ。砂糖販売業からスタートし、食品卸売業に展開。さすがの老舗企業も昨今の経済状況下において厳しい状態が続いた。そこで、商店街の活性化を目的とした近代化資金の融資の話が持ち上がり、それをきっかけに新業態を開発することとなった。

 簡単に言えば、百円ショップとコンビニエンスストアを掛け合わせたような店舗である。ただし、一般的な百円ショップが日常雑貨品を主流とするのと違い、CVSと同じく食料品が中心なのである。食料品と雑貨の違いは、人が口にするものであり、信頼性のあるブランドでないとなかなか売れないのが実態。当該企業でも商品は国内有名メーカー揃いで、全品百円だから人気を博しているのである。信頼性ある商品を低単価の百円で販売できるところが味噌であり、仕入力が持ち味と言えよう。

 以上のことを差別化要素とし全国にFC展開している。言えば、品質とコストを掛け合わせた差別化戦略をとって成功していると言えよう。

 

3、タマホーム

 また、福岡県に創業八十年の歴史を誇る屋根工事の老舗企業の一部門で休眠状態であった建設部門を平成十一年に立ち上げ、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進中の住宅会社が「タマホーム」がある。なんと平成十四年度の売上高が百五億円、翌十五年度が三百億円、当十六年度には六百億円に達すると言うから、目覚しい成長ぶりである。承知のとおり住宅業界は熾烈な競争で倒産を余儀なくされている企業が多い。その中にあっても後発ながら独自の差別化戦略を組み立て全国展開中なのである。その ポイントを整理すれば以下四点になる。

(1)自由に間取りが設定できる自由設計

(2)オール電化、完全バリヤフリー

(3)国内有名メーカーのみの豪華使用(標準でジェットバス、ウォシュレット、システムキッチン…)

(4)それらのことが揃って坪単価二十四万八千円

 二世帯住宅四十坪の住宅が一千万円で出来てしまうのである。例えば、五十代後半で住宅も古くなり、リフォームしようかと考えている人が建替えに踏み切れる。また、住宅をあきらめ賃貸住宅に一生住もうと考えていた人も新築に向けて動き出すこともある。これらの人々は、建替え、新築が嫌というのではなく、高額な借金を嫌っていただけなのだ。言えば、眠っていたマーケットの掘り起こし成功した当該企業が、飛躍的な成長路線に乗るのも想像に難くないであろう。

 いずれにしても、以上の事例に共通していることは、業界的に見れば衰退マーケットに属していると言うことである。その中にあって、「差別化は無理だ」と考える九九%の人と「考えれば衰退マーケットでも必ず策はある」と考える一%の人の違いではないだろうか。どのような環境化におかれていても本気で考えれば差別化要素の一つや二つはあるものだ。要はプラス視点に立って、顧客思考で発想できるかが勝負となるのだ。その切り口として「品質、コスト、サービス、スピード」で考察 してみると意外と見えてくるかもしれない。(「観光とけいざい」第654号 2004年4月1日号)


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