連載 マルチメディア&リゾート〜沖縄との相性〜(1)
島田勝也(NTT西日本沖縄支店)


「SOHO」と「トマリン」ビル

 昨今かなり一般的に認知される様になったSOHO(Small Office Home Office)を紹介しながら沖縄との相性について考えてみる。

1、SOHOとは

 用語辞典等によると「中小事業所でコンピュータネットワークを用いることによりほかの会社とビジネスをしたり、自分と会社をコンピュータネットワークで結び、出社しなくても会社と同じ環境を自宅に実現すること」等と書かれている。産業構造の急激な変化で大企業から大量の人的資源が流出する中、一方ではニッチと呼ばれる産業の隙間を埋める様な業種・業態へのニーズが高まっている。大きな組織やオフィスを構える必要がなく、むしろ小規模の方が個々人の持つ創造性を引き出 し能力を発揮させる事が出来るというのである。

 卓越した能力・技能を持っている個人が、SOHOを活用してあまり資本金をかけずにベンチャービジネスをたち上げるというケースが増えている様だ。ある専門家は「日本でも産業構造が変り雇用がなくなれば失業かSOHOしかない。SOHOに携わる人は爆発的に増える」と断言している。

三鷹市パイロットオフィスの場合

 SOHO集積ビルの成功例が東京都三鷹市にあると聞いて早速出かけてきた。JR中央線の三鷹駅前。コンビニ等も入っている雑居ビルの二階フロアに三鷹市の外郭団体「三鷹市まちづくり公社」が昨年十二月に開設した「三鷹市SOHOパイロットオフィス」(http://www.sohocity.or.jp)がそれである。自治体では全国で初めての試みと言う。現在、個人事業者を含む九社の小さなオフィスがオープンしている。

 どの様な職種が入居しているかというと、コンピュータソフト開発事業、インターネット関連事業、CD\ROM等の制作事業、デザイン・印刷事業、経営コンサルティング事業等かなりクリエイティビティーの高い業種である。そして、入居者の年齢構成も二十代から七十代まで各年代の方々(女性が一名)が入居している。これは運営主体側がパイロット事業という事で意図的に各年代から入居者選定した可能性があるのだが、さらに驚いた事は、入居募集期間に正式に申込があった件数 は九件の募集で五十七件だったという。

 この不動産不況のご時勢に驚く程の人気だと思う。入居者にそのメリットを聞いてみると「入居者間で情報交換も出来るし、職住近接で効率的でありながら仕事にメリハリがつく」と言う。また占有スペースは六畳程の狭いスペースではあるが、共用の会議室や打合せ卓、カラーコピー機、あるいは事務所の受け付け機能等のサービス機能があり、個人事業主にとってはたいへん有難い仕組みが整っている。

 気になるのは家賃であるが、広さに比例して三万二千円/月から七万三千五百円/月となっている。立地や付加サービスを勘案すると、格安の条件と言える。

3、三鷹市の戦略

 三鷹市は平成八年からその外郭団体において「情報都市づくり部会」を発足させている。この部会は過去三度にわたる報告書をまとめたが、その中で「SOHOシテイーみたか」を提唱し、SOHOが集積し続ける街を目指す事とその優位性を説いている。三鷹市SOHOパイロットオフィスは、その研究成果を検証するために開設した訳である。

 そして、三鷹市は次なる展開を決定し実行に移す。来年三月「三鷹市産業プラザ(仮称)」を着工する。プラザ建設は「中心市街地活性化基本計画」として位置づけられたもので、国から十億円の出資を受けて建設するもの。地上七階建てのビルにはSOHOワーカーや都市型産業育成のためのオフィス、公共駐車場等が設置される。平成十二年一月には本格的な「SOHOシティー三鷹」の拠点が出来る予定である。

4、「メディアポートとまりん」

 そこで提案だが、那覇市の「とまりんビル」にSOHOフロアを開設して入居者を募集しては如何か? なにかと風当たり強い第三セクタービルであるが、商業集積あるいは安定した大企業テナントの入居ばかりに期待するのではなく、思い切ったビル全体のコンセプト転換も含めた、二十一世紀のウォーターフロントビルとしての再生を期待したい。

 「那覇市の中心地で泊港という交通の要所に位置し、ビル内にはホテルやレストラン、本屋等の専門店街を有し、加えて窓から海が見えるという環境に、SOHOオフィスを安価な家賃にて提供出来る!」となれば、三鷹市にも負けない相当な魅力である。

 そして、コールセンタ関連企業に適用したようにギガビット回線を利用して那覇=東京間の通信料金八割軽減等という措置が実現すれば、通信情報においては東京と同じ環境が入居者に提供出来る訳で、東京からの入居者が殺到するでは? と皮算用をしている。

 実現の暁には情報通信と物流の港を融合させるという意味で、そのビルの呼称は「メディアポートとまりん」でスタートして頂きたいものだ。

 国や県の制度的・資金的な支援が必要な部分もあろうが、基本的には「とまりん」のポテンシャルをもってすれば成功させることが出来ると思う。いずれにしても、沖縄がSOHOオフィスのメッカになる事がひいては「沖縄マルチメディアアイランド構想」の実現に繋がるものと確信する。

 アメリカでは既に人口の五分の一、四千二百万人がSOHOワーカーという。アップルコンピュータ等の様にSOHOの前身といえるガレージで操業開始し大企業に発展したケースもある。日本はこの分野ではかなりおくれを取っているが、今後は急速にSOHOワーカーと呼ばれる人々が増えるであろう事は間違いない。我々、沖縄も遅れることなく、いや先んじてSOHO先進地となりたいものだ。 (「観光とけいざい」99年10月1日)


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