連載 マルチメディア&リゾート〜沖縄との相性〜(2)
島田勝也(NTT西日本沖縄支店)


「情報流通」で大交易時代の再現へ(上)

 今月と来月は二回に渡って「情報流通」という言葉を沖縄にあてはめて発展的に想像を巡らしてみる。

「情報流通」とは

 最近になって我々は「マルチメディア」という言葉はあまり使わないようになってきた。

 代わって使われ出したのが「情報流通」という言葉である。用語辞典によると情報流通(global information sharing)は「二十一世紀に来るべき情報通信の姿の総称」等と訳の分からない事が書かれている。そこで、私なりに沖縄からの視点で「情報流通」を解釈してみた。すると、この「情報流通」の概念は沖縄の二十一世紀の経済発展を占うのにたいへん貴重な興味深い示唆を与えてくれることが分かった。

 十四世紀後半から十六世紀にかけて琉球王国はいわゆる「大交易時代」を迎えていた。東アジアの物流拠点であった那覇の港には、日本や中国、朝鮮など東南アジア諸国の商品が貿易船により持ち込まれ活発に取引きが行われていた。当時、付加価値の高かった中国商品が特に多く取引きされる東アジアの物流拠点の一つと呼べる地であった。

 情報通信の発達した現代においてはその商品を「情報」という高付加価値商品に代えて「流通」させる事で、沖縄に大交易時代を再現することが出来るのでは! と密かに私は考えている。キーワードは「情報流通」である。

アイルランドが大いに参考になる!

 ヨーロッパ大陸の北東端にアイルランドという島嶼国がある。最近十年でコールセンター等の情報通信関連企業が続々進出している。その企業の国籍はヨーロッパ諸国やアメリカや日本であり、業種は金融やコンピュータ、情報通信関連、航空などさまざまである。ヨーロッパにおける情報流通の拠点をアイルランドに開設し、ヨーロッパ各国をマーケットとして商売を行っている訳である。

  コールセンタービジネスの具体例を紹介する。米国の四大航空会社の一つでるアメリカン航空は、アイルランドにカスタマーコールセンターを開設し、ヨーロッパ内の顧客対応(航空券の予約など)をこの地で一手に行っている。イギリスやフランス、ドイツなどヨーロッパ各国のアメリカン航空の顧客が、飛行機の予約を行うために自宅の電話からコールすると、料金無料でアイルランドのコールセンターへ繋がる。センターではどの国からのコールであるかは事前に表示されるシステムがあり、その国の言葉が話せるオペレーターの席へ繋がる様になっている(もっとも、アイルランドのオペレータは三〜四カ国語が使える者がたいへん多い)。

 スムーズなコミュニケーションと親切なサービス、そして最新の情報を提供する事で顧客満足度は高い。企業側も、ヨーロッパ内に各国毎に拠点を分散して持たなくてすむことからコストも抑えられる。 この事例から、他の業種の場合も想像して頂きたい。金融商品あるいはコンピュータ、通信、各種テレホンショッピングのカスタマーコールセンターには同様のメリットがある。

沖縄の現状と将来…

 さて、我々のウチナーの場合である。昨今の報道でご存知と思うが沖縄でもコールセンタービジネスの集積が相当に進んでいる。その業態を「情報流通」という視点からみてみると、沖縄に開設されているコールセンターを港兼工場、通信回線を船舶、情報を商品と置き換えて考えてみることが出来る。日本というマーケットから通信回線に乗って「情報」という素材が沖縄のコールセンターに入ってくる。その「情報」を加工し付加価値をつけて再び通信回線に乗せて日本のマーケットへ送 り届ける。付加できた価値の量が沖縄側の取り分・利益である。「情報」の加工貿易を行っていることになる。

 この状況をアイルランドのレベルまで高めていけないだろうか?  もし、アイルランドの状況を沖縄で展開出来るのであれば、情報による「大交易時代」の再現と言ってよいのではかと考える。沖縄に日本のみならず台湾や韓国、中国など東南アジア、さらにアメリカやヨーロッパの企業も進出し、日本、台湾、中国、韓国など東南アジアをマーケットとした「情報流通」の拠点を置く。そして、沖縄人が媒介者となって国と地域を超えて「情報」を流通させるビジネスを行う。そのような状況が実現すれば「大交 易時代」の再現と言っても文句はあるまい。 夢のような話だと言われるかもしれないが、折角、参考になるアイルランドという事例があるので、冷静にその実現性を探ってみたい。(つづく)(「観光とけいざい」99年11月1日)


 |  連載3 |  HOME |
本ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。すべての著作権は沖縄観光速報社に帰属します。
Copyright (c) 1996 Okinawa Kankou Sokuhousya. No reproduction or republication without permission.