連載 マルチメディア&リゾート〜沖縄との相性〜(4)
島田勝也(NTT西日本沖縄支店勤務)


沖縄を科学技術の拠点に

 輝かしい二〇〇〇年の新年号であり特に今回は「夢」の大きな内容を書いてみたいものだ。

 新たな千年あるいは新たな百年の幕が明けた訳であり長期的な戦略を描いて今の沖縄を考えてみたい。

 徳川幕府は島津を手先として「琉球」を日本の国益のために支配、アジア戦略の中で利用した。中国・アジア貿易の中継基地としてであった。その後、廃藩置県・台湾併合等という歴史の節目を経て沖縄は日本の偏狭の地という地位に甘んじた。大戦後、アメリカは直接統治そして復帰後は日本を手先として「沖縄」をアメリカの国益のために支配し利用。現在に至る訳だがそれは軍事基地としてであった。この「キーストーン・オブ・パシフイック沖縄」を、二十一世紀はどの様な戦略で使わせることが我々沖縄人にとって得策なのか、是非とも我々沖縄側から積極的にコミットしていきたいものだ。

 その一案として「科学技術拠点沖縄」なるイメージをご紹介してみる。

 明治維新以降の日本は西洋諸国へのキャッチアップ、殖産重工と富国強兵策による大国化を目指した。敗戦後は、科学技術力をベースにした加工貿易策により経済大国への道をひた走ってきたと言える。ところが、その目標が達成されたかに見えた九〇年代に入り状況は一変した。金融のグローバル化や情報通信技術で遅れをとった日本の経済は一挙に落ち込み同時に科学技術力に対する自信も喪失しかかっている。

 総理大臣直轄の「経済競争力会議」なる民間を加えた審議会も立ち上がり、その中でも科学技術力全般の強化が急務との声が上がっている。

 その状況を踏まえて「沖縄」を持ち出してみたい。二十一世紀の日本の盛衰を大きく左右する科学技術力強化策をもちろん国策として沖縄で展開してもらいたいと考えた。国で考えられている事は簡単に言うと基礎研究はじめ科学技術全般を再度国策として強化しようというもの。科学技術の拠点と言えば筑波や阪奈に似たような拠点があるが規模が小さくコンセプトが古い。沖縄に新たに形成する「科学技術拠点」の目的は科学技術大国日本の再生なのである。

 具体的な内容は後日に廻すが、イメージだけで言うと例えば「普天間」の跡地に国立研究機関や多国籍な民間企業の研究所や実験施設が好条件で立地出来る条件整備を行う。併せて大学等の教育機関が集積する。世界各国から技術者が集う学術研究都市が形成される。加えて日本の科学技術のショールーム的な役割を持った(フロリダのエプコットセンターのような)テーマパークもオープンする。正にリゾート&リサーチである。

 大切なのは何故沖縄か? ということである。「日米安保の代償」等という気は全くなく、その理由はこうである。一つ目が「アジアに開かれた拠点」というコンセプト、日本の中国・アジアに対する貢献、言い換えればアジアの盟主としての地位を確保するという国益にかなう。二つ目が「米軍基地の存在」という事実。嘉手納基地を中心とした軍事関連技術の集積とアジア諸国の日本と中国への警戒感を緩和する効果がある。三つ目は、実に小さいことであるが昨今の沖縄振興策と称する無駄に使われようとしている金も本当の価値創造に繋がるものにするという意味もある。強いて言えばこの様なビジョンを沖縄人に示すことでいわゆる過重な基地負担への不満軽減にはなる。

 ところで、日本の科学技術力の向上にひたすら力を注いできた科学技術庁(これまで沖縄とはあまり縁のない役所)は最近失態続きである。ご承知の通り「原子力開発」と「宇宙開発」が相次いで信用を失った。おそらく役所としての起死回生索を狙っているはずである。

 日本の科学技術立国再生の責務を負う役所としてこの提案をどの様に受け止めるのか?

 実は昨年末に同庁のキーマン数名が県内の調査に入ったという噂もある。

 国策定の「沖縄経済振興二十一世紀プラン」の中においても国際情報特区構想やゼロエミッション等が存在しており、これらを包含するようなよりスケールの大きいな政策を打ち出してもらいたいものだ。出し惜しみは結局無駄遣いに終わる。ある試算では五千億あれば世界に冠たる「科学技術拠点」を形成することが出来るという。沖縄のためにではなく国益のために、沖縄振興策ではなく日本振興策として実施して欲しい。

 迎える新しい時代は「沖縄のために何をしてもらうか」の発想から「沖縄がアジア・世界にどんな貢献が出来るか」の発想に切り替えなくてはならない。そして大切な事はそれを沖縄側から発信していくことだ。(「観光とけいざい」2000年1月1日号)


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