連載 マルチメディア&リゾート〜沖縄との相性〜(6)
島田勝也(NTT西日本沖縄支店勤務)


サミットに中国の江沢民が来る

 前の原稿で提起した「沖縄を科学技術の拠点に!」には予想以上の反響があり数名の方からはお電話も頂いた。特に偶然にも来沖されていたトップクォークの発見者である米国フェルミ研究所のジー・ピー・イェー(G・P Yeh)博士には、「面白い発想!」と誉めて頂き、自分の研究所で沖縄からの若者を預かり、沖縄の発展に協力するとまで言って頂いた。そんなことで気を良くしたこともあり、今回はその次を想像してみることにした。

 昨年の四月にサミット首脳会議の開催が決まって以来「沖縄からの情報発信云々」「沖縄観光への効果云々」といかに地元のメリットを見出すかが議論されてきた。しかしながら、サミットは国家行事であり各国首脳やマスコミも沖縄を見ることが目的ではない。

 開催地として情報発信される副次的なPR効果はあるが、本質はどの様な内容の会議が沖縄という地でなされるかである。世界のリーダーが今世紀最後の年にアジア極東のこの島に集い「二十一世紀の世界を議論する」訳で、我々としては二〇〇〇年、沖縄で…という歴史に残る成果を期待したい。沖縄側としても、長く歴史に刻まれるサミットになる事を模索すべきと考る。そう考えた場合、答えは「沖縄サミットに中国の江沢民を招く」ということになる繋がる。

 もちろん、今回は実現してもゲストとしての参加になるだろう。ロシアの初参加の場合もそうであった。しかしながら実現するとその影響は相当に大きい。これまでは、ヨーロッパ大西洋の会議という印象であったサミットが日本に加え中国の参加によりアジア太平洋に目が向くことなる。時代の節目を印象付けるであろう。

 その実現性はどうか? 中国の江沢民国家主席を沖縄サミットに招く構想は、ドイツのシュレーダー首相が昨年十一月、日本と中国を訪問した際に提唱した。

 小渕首相は中国の参加に積極的である。小渕首相も国際政治の舞台で大きな得点をし政権浮揚の梃子にしたいはずである。

 「アメリカが認める訳がない」と言う人が少なくないが、先日も米国政府高官(ピカリング国務次官)が中国のオブザーバー参加を容認する発言をしている。最後の参加となる米国クリントン大統領も二十世紀のという時代の一つの象徴であった東西対立を中国との融和をもって解消させた大統領として歴史に名を残したいはずである。アジア諸国にとっては脅威となりつつある軍事大国中国の存在を国際枠組みに組入れてしまうことの安堵というメリットがある。中国にとっては当然ながら世界経済への本格進出など招かれるメリットは大きいだろう。

 当の中国は表面上は参加しないと述べている。しかし長期的には「サミット入りは名実ともに大国への仲間入りを意味し、G9を利用して国際的により大きな力を振るうこともできる」(中国外務省筋)との期待がある。問題は、江沢民国家主席がまだ一言も言及していないことだ。G8がこぞって中国の参加を求め、中国国内を納得させる大義名分もそろえば、「大国外交」を好む江主席が参加を決断するかもしれない」(朝日新聞二月六日)という報道もあり、まんざらでもない様子だ。

 深い歴史的繋がりのある琉球に世界のリーダーが集結するこの時に中国の代表が同席しないのは逆に不自然とも言える。日本もこの状況を利用し中国を主体的に世界舞台に押し上げることによってアジアの盟主としての地位を確固たるものにするくらいの気構えが必要である。

 北の日本、東の米国、西の中国、南のアジア諸国、その結節点「沖縄」が再び歴史の表舞台に登場する時代を迎えている気がしているのは私一人ではないと思う。今の中国との接近は沖縄にとってリスクが大きすぎるとみる人も多い。しかしながら中国との関係は地理的に避けて通れない訳であり、この時期に一気に関係を進めておく事が大切だと考える。七月の本番をG8+1とすることで、そのイベント価値が一層増すことになる。「日本、米国、中国の首脳が琉球で一同に会する」…このワクワクするような二十一世紀の入り口に立って、我々の沖縄はいよいよ大事な場面を迎えている様だ。「しなやかに」そして「したたかに」振る舞いたいものだ。(「観光とけいざい」2000年2月15日号)


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