沖縄観光30年史■連載1
渡久地政夫(沖縄観光速報社・代表取締役)


ホテルはなぜ西海岸に集中するか

 図でも分かるとおり、沖縄本島、西海岸には沖縄を代表すリゾートホテルが林立している。西海岸に関係する市町村は南から糸満市、那覇市、浦添市、宜野湾市、北谷町、読谷村、恩納村、名護市、本部町、今帰仁村、大宜見村、国頭村。

 まず那覇市、ロワジールホテル、パシフィックホテル。いまは閉鎖している那覇東急ホテル、エッカホテル、最近オープンしたビーチサイドホテル。かりゆしアーバンリゾート那覇。

 北上して宜野湾市にはラグナガーデンホテル。北谷町美浜には高層ホテルが計画されている。さらに読谷村に入ると日航アリビラ、残派岬ロイヤホテル。

 恩納村に入るとルネッサンスリゾート、恩納マリンビュー、ムーンビーチホテル、タイガー観光ホテル、リザンシーパークホテル谷茶ベイ、万座ビーチ、ホテルみゆきビーチ、サンマリーナホテル、かりゆしビーチリゾートホテル。

 名護市に入るとザ・ブセナテラス、沖縄サンコーストホテル、喜瀬ビーチホテル、ゆがふいんおきなわ、ホテルリゾネックス名護、いこいの村おきなわ。

 本部町には本部グリーンパークホテル、マハイナ、ロイヤルビューホテル、本部リゾート、オンザビーチルー、ビセザキ、今帰仁村にはリゾートホテルベルパライソ、伊江島にはYYYクラブ、ヒルトップ。

 国頭村にはJALプライベートリゾートオクマ。

 離島の久米島には日航久米アイランド、イーフビーチホテル、久米島観光ホテル、座間味村、渡嘉敷村にはビーチ沿いに民宿がずらっと並ぶ。ざっと数えてホテルは三十五軒。収容人員は九万三千人に上る。

 一方、本島東海岸には北からカヌチャ,宜野座村、同村漢名、伊計島に伊計島リゾート、宮城島に一軒、知念村にホテルサンライズ知念、具志頭村のサザンリンクスとわずか六軒である。三十五対六という圧倒的な西海岸優位である。同じ本島で東と西ではこんなに違うものか。何が西海岸にホテルを集中させたのか。貴方はどう思いますか。いや貴方が企業家でホテルを経営するとしたら西海岸と東海岸のどちらを選びますか。そしてその理由は。これが分かれば貴方は一流のホテル経営者の感覚の持ち主といえる。

 ある日、本土の不動産業の人にあった。

 「東京のホテル業の人が西海岸にホテル用地を探しています。知りませんか」

 「西海岸にはもうありません。東海岸ではいけませんか」

 「私も何遍も沖縄に来ていますが、先方がぜひ西海岸というのでね」

 「西海岸でないといけない理由でもあるんですか」

 「そのようですね」

 この人は理由を知っている。食い下がった。

 「理由が分かれば土地を手放す人も出てくるかも知れませんよ」

 先を促した。

 「実は単純なことです……」

 「どうしたんですか」

 大げさに驚いて見せた。

 「西海岸は日没が見えるからです。沖縄のサンセットは有名ではないが、それは地元の人々があまり意識しないからです。しかし、日没の美しさは世界一ですよ」

 沖縄の日没を誉める。そう言えば石垣市のフサキビーチでみた日没はダイナミックだった。ビーチの砂の上に腰をおろして見ていたが、竹富島、次いで西表島を真っ赤に染めて太陽が沈む様は世界一と評判のマニラ湾の夕日にも劣らぬ光景だった。釣瓶落としと言うがその通り、みるみるうちに太陽が落ちていく。同時にあたりがうすぐらくなり、海もだいだい色からクロに変わっていく。

 「日没がどうしました」

 「いや、ホテルの部屋やレストラン、ビーチからサンセットを眺めるのは無上のリゾートライフですよ」

 「そんなものですかね」

 「そうですよ。第一ロマンチックじゃありませんか。カップルでも夫婦でも仲の良い友達同士でも、沖縄のサンセットには感動します」

 「感動を売るために西海岸にホテルを建てて、人を呼び集めるのです。今に沖縄のサンセットは世界一有名になりますよ。同時に沖縄のナイトライフを充実させるとハワイに負けないリゾートゾーンになります」

 なるほど、夕日を見に沖縄に来るのか。そして人生の感動をあじわうのか。

 日本全国で温泉が出る。温泉が出ると温泉旅館が我れ先に進出してくる。温泉は日本人にとって大きなリゾートだ。沖縄のビーチ、日没は日本の温泉に負けない大きなリゾート資源なのだ。しかもこの資源は沖縄にしかない。日本の有名な温泉地帯と競争して勝てる唯一の武器だ。西海岸にホテルが建つ理由は分かった。これなら勝てる。大分の別府から宮崎県に及ぶ東海岸は沖縄におとらぬ美しい海岸が続く。だが、沖縄のようにホテルは集中しない。

 ところが東海岸に建つ理由もあるはずだ。もし、夕日が見えるのがリゾートホテルの絶対条件なら、世界中のリゾートホテルは全部西海岸に建つはずだ。しかしそうはなっていない。東に建てるには夕日に負けない設備がいる。お金が余計にかかるのである。 (「観光とけいざい」第610号02年4月1日付け)  


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