沖縄観光30年史■連載6
渡久地政夫(沖縄観光速報社・代表取締役)


明るく広いロビーが特徴 沖縄都ホテル、リゾートを取り入れる

 こちらは那覇市の都ホテル。久保田盛宏会長の下、桑原守也社長と小林正信常務のコンビで運営していた。

 「どうです。広いでしょう」

 「ええ、それに明るい」

 「そうです。この二つがこのホテルの特徴です」

 ロビーは二階の軒下までガラス張りになっていて、沖縄の強い日差しが差し込んでいる。冷房が程良く聞いていて快適だ。

 小林常務が解説した。

 東京などの大都会のホテルは入ると中は薄暗くなっている。これは大都会の人は仕事が激しいのでストレスが厳しい。ホテルはわざと薄暗くつくってある。ちょうど、動物が薄暗い自分の巣穴に逃げ込むように都会のホテルは人々の巣穴のように休息の役割を果たしているのである。ところが沖縄のホテルは大都会のホテルとは違う。人々は明るいリゾートを求めてくるのだ。もし沖縄のホテルが 薄暗かったら、顧客は折角の浮き浮きした心理とはかけ離れ「なんだこれは、俺達はリゾートで伸び伸びと解き放なたれに来たのだ」と期待を裏切ることになる。そこで沖縄らしい、明るい雰囲気のロビーにしたのである。

 第二は広い点だ。このホテルのロビーはバスが四台同時に到着しても収容出来る余裕がある。狭いとお客さんはあふれて迷惑をかける。またこのロビーは集合場所にもなる。ホテルではロビーの広さは決定的だ。

 そう言えば那覇空港の国際線ターミナルはひどく狭いので飛行機が二機同時に到着すると、後から来た飛行機の乗客は前の乗客が全員外に出るまで機内で待たされる。その上、ボーディングブリッジもない。経済大国日本の国際空港にしてはお粗末きわまる。南の玄関口とは口ばっかりで日本政府の外客受け入れの貧弱さが見える。真っ先に国際線ターミナルを整備すべきだ。これを問題にしない ジャーナリズムもおかしい。

 シンガポール空港は国際線の乗客が一度に降りてきても五分でさばけると自慢していた。それだけ、バス、タクシーが整備されているのである。ついでに言うとシンガポールの空港内は至る所に熱帯の花があふれ、シンガポールに来たという実感がわく。沖縄は沖縄らしさが一つもない。

 ラスベガスは日没に負けないようにカジノを作った。香港は歓楽街を作った。台北にしても香港と同じように人々を喜ばせる仕掛けを町に作った。全て日没の美しさに負けないためである。こうして世界中の日没のないところに大金をかけて華やかな、豪華な、我を忘れさせる雰囲気をもった街が誕生した。

 仕掛けといえば那覇市内でもこんな事があった。

大浴場をつくって成功 ホテルなは、ヒントは添乗員の一言

 那覇市内で老舗のホテルなはで社長の平良盛三郎さんはある日、旅行社の添乗員に、

 「大きな風呂を用意しないと売れませんよ」

 と言われた。そう言えば沖縄中、どこをさがしても大きな風呂を備えているホテルはない。平良さんはこの添乗員の話を真剣に検討した。

 「よし、大きな風呂で勝負してみよう」

 早速、ホテルの一角に大きな風呂を作った。

 「ホテルに大きな風呂が出来た」

 本紙にこのような記事が出たのはその後、間もなくである。ついで地元の日刊紙にこの風呂の記事が出た。この両方の記事のおかげで「ホテルなは」はたちまち有名になった。

 有名になるにつれて客も増えた。倍増、倍増の勢いである。ホテルなはは那覇市内で押しも押されもせぬ大ホテルとなった。

 大きな風呂といえば恩納村にあるホテルみゆきも立派な風呂を備えている。この風呂は美しい海が一望の下に出来る。海を眺める風呂は本土では真似の出来ないことである。浴衣姿でタオルを手に風呂場に急ぐ。こんな光景が本土の温泉旅館では日常茶飯事であり、みんな楽しみにしている。「みゆき」では海水浴気分で風呂に入る。大きな風呂場が気分を雄大にさせる。最近の話では那覇を代表する有名なホテルが大きい風呂の計画をたてた。ところががスペースがない。どうしようか目下、検討中だ。

 ホテルの大浴場といえば、今はルネッサンスホテルとなっている山田温泉は名護方面に行く人に取っては、楽しみの施設だった。大浴場があったからである。車で那覇からわざわざ入浴に来る人もいた。大人気だった。ホテルが出来て大浴場の賑わいがなくなったのは寂しい。

 航空会社の人と話したことがある。

 「風呂を作っても温泉が出ない」

 「いや、温泉を作れといっているのではない。大きな風呂が必要だといっている」

 「場所がない」

 「場所はあると思う。例えば恩納村の山側だ、みんなビーチのそばばかり狙うから場所が無くなる。山側ならいくらでも企画できる。場所はある」

 「どんな風呂が考えられるか」

 「湯や水がふんだんに使える風呂だ。大きな湯船も必要だ。水脈さえ見つければ成功したと言っていいだろう。水を見つけるのは本土に専門家がたくさんいるのでそうむつかしいことはない」

 「大きな風呂場だけでいいだろうか。水が出ても冷たくては使えない」

 「温めればいい」

 そう言えば知り合いの人が廃タイヤを燃やして熱湯をつくるボイラーを販売している。この人は廃タイヤは処分するのに困るので廃タイヤボイラーを開発したという。雪の降る冬でも廃タイヤを燃やして温水を作り、この温水で温室を温め、冬でも野菜を育てるのだ。雪の降る寒い本土では廃タイヤのボイラーは必要でも温かい沖縄ではこのボイラーは必要ない。しかし、大きな風呂場が必要なら 廃タイヤボイラーも需要が出てくる。なにせ燃料となる廃タイヤはいくらでもある。しかも「燃やして下さい」と費用を添えて持ってくるのだ。こんなうまい話はない。

 「いや、大きな宴会場が必要だ。この宴会場は別に難しい仕掛けは必要ない。ただ、舞台とマイクがあればいい。後は畳敷きで広ければいい」

 「どうするのですか」

 「入場料はもちろん要る。入場料に抵抗があるなら利用料といってもいい。舞台では有名な地元の民謡歌手が歌う。自分でマイクを手に得意ののどを披露してもいい。踊ってもいい。ここには花札、トランプ、囲碁、将棋、麻雀などの室内娯楽の道具を揃えておく。風呂は何遍入ってもいいし、飲食設備も揃っているから高齢者にとっても遊ぶ場所として最適だ」

 「飲食設備とはどういう意味だ」

 「碁会所でもわかるが碁を打ちながら、コーヒーは飲む、そばは食べる、スシ、ケーキはつまむで口は少しも休むひまがない。巨大な隠れレストランだ。高齢化が進むとこういった娯楽の殿堂というか、娯楽センターができるよ」

 「飲食設備とは面白い」

 「カラオケにしても部屋の中で飲食出来るのがいいよ」

 カラオケの人気が飲食設備にあるとは思いつかなかった。

 「高齢者社会の到来で高齢者は行くところがない。二十四時間あいているこんなところがあれば高齢者は喜んで遊びに来るよ」

 「ちょっとした救急医療室も備えておけば家族も心配ない」

 山側にリゾートを作るというのは既に成功して実証済みだ。平良盛三郎さんが、恩納村の山側に「かりゆしビーチリゾート恩納」を作った。建設当時、本土の大手旅行会社の人は「ビーチ沿いならともかく山側では顧客はいないだろう。やめた方がいい」と助言した。この助言を無視して平良さんは建設を強行する。できあがってみるとこの旅行会社も「協定を結んでくれ」と申し込んできた。

 「ビーチが無くてもいいんだということがよく分かりました」と平良さん。山側でも利用者はいるのである。

 ここも広いロビーと飲食設備、プール、ゴルフ場、歩いて行けるビーチを持っている。 (「観光とけいざい」第616号02年7月15日号)  


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