沖縄観光30年史■連載7
渡久地政夫(沖縄観光速報社・代表取締役)


大浴場がブームになる予感 海水を温めるタラソも有望

 大浴場の設置がブームになる予感がする。二つの理由がある。

 一つは顧客の側である。

 日本人は「温泉でのんびりする」という願望がある。温泉に行く理由の一つに、お風呂でゆっくり、のんびりするということがある。温泉旅館に行くとわかるが、顧客は男女を問わず、お風呂に行くことを楽しみにしている。ゆかたを着て、タオルを手に浴場に急ぐ姿はなんとも楽しそうである。

 かつて能美さんという日本の旅館のコンサルタントが県ホテル組合の招きで沖縄を訪問したことがある。海洋博覧会開催の前である。この人は日本の温泉旅館の経験豊富な方で、料理から、旅館の経営の仕方まで何でも知っていた。この方がホテルムーンビーチをみて「大きなお風呂を作りなさい」といった。私は「ホテルに大きな風呂なんていらない。海外のホテルの浴室はみんなこんなものだ」と内心、思っていた。

 ところがこれがホテル・旅館の経営では大変大事なことであったのだ。顧客は家庭では味わえない大きな浴槽でお湯をじゃぶじゃぶ使い、手足を思う存分のばして鼻歌でも歌いながら、ゆっくりする。大浴場には温泉の効能以外にこんな使い方があるのだ。

 「湯気が天井からぽたりと背中へ〜」と歌にもあるように温泉の効能は大きな浴槽と豊富な湯量にある。日本人客をターゲットにするなら「大浴場は欠かせない」というのが一つ。

 最近は外国人も日本の温泉のよさを見直して日本の大浴場が売り物の一つとなっている。

 もう一つは水の節約である。沖縄の上水道の総元締めである沖縄県企業局の調べでは観光客の一人一日あたり水の使用量は七百六十リットルである。大体一升瓶四十本分だ。手足の洗い水から、飲み水までこの程度の水量だというのである。ここで大浴場が登場する。

 外国人のバスの使い方は、まず湯をバスタブいっぱい入れる。そのお湯につかり中で石けんをたっぷりつけて体を洗う。次に石けんだらけの湯を全部流して、その上で新しい湯を満たす。汚れたお湯を何回も流し、その度に新しいお湯をいれる。こうするのがバスの使い方だ。日本人のように大浴場で湯をくみだしてかける使い方とは違う。

 この方法だと燃料も水も大量に使う。七百六十リットルなんてものじゃない。

 ある沖縄のホテル経営者はいう。

 「シャワーならいくら使ってもいいが、湯を満たしてから使ってもらったら水道代が高くつく。大浴場だとそんなに湯は使わない」

 大浴場は宿泊者の側と経営者の側の両方の満足を満たすのである。そのためには燃料と水がほとんど、ただ同然がいい。この条件を満たすのは何だろうか。経営者の苦労は実はここにある。

 そこで脚光を浴びるのが「タラソテラピー」である。 海水は無料でしかも無限にある。この海水を使ったタラソテラピーが流行すれば水の心配はない。その上、美容にも健康にもよいとなれば、顧客、特に女性には歓迎されるはず。

 こうしてフランスのタラソテラピーの調査研究へ沖縄金融公庫が中心となって視察団の派遣となった。(本紙の取材同行記を参照)

 現在、経営陣から注目されているのは「残波岬ロイヤル」の大浴場だ。ここは沖縄でも有数の大浴場を持つ。残念ながら、宣伝に活用されてないので隠れているが、これが誘客に結びつくときは大きな威力を発揮するだろう。海水浴場もあるし、マリンレジャーには申し分ない。しかも風力発電設備まであり、沖縄のホテル旅館の将来の行き方の暗示をしているようである。

 送客側の旅行社がこうした大浴場のことを知ればどっと送客するはず。このホテルでは大浴場を積極的に広報する仕組みなり、方法がまだ定まっていないようである。このまま眠らせるのは惜しい。

 こうしていま沖縄のホテルで大浴場の見直しの機運がたかまってきたのである。ラグナガーデンホテル、前述の那覇市内のホテルの例など大浴場設置の動きは各所に見られる。 (「観光とけいざい」第617号02年8月1日号)  


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