沖縄観光30年史■連載11
渡久地政夫(沖縄観光速報社・代表取締役)


沖縄ツーリストのマスコミ対応 広報の技を磨け

 沖縄の我々は広報宣伝が下手だ。

 私は新聞の修行を福岡でやったが、向こうでは会社・企業は広報宣伝に力を入れている。

 例えば各社に広報担当員がいて、新聞、ラジオ、テレビの記者と常に綿密な打ち合わせている。

 沖縄で驚いたのは、記者諸君を電話一本で集めて、広報資料を配り、記者会見と称していることだ。

 こんなことをしたら、向こうではたちまち「総スカン」を食い、二度と扱ってくれない。そのかわり、何か不祥事があれば「書きまくってやる」と手ぐすね引いて待っている。

 今回のUSJ(大阪)のトラブルについて調べてみたら、案の上USJはオープン当初、マスコミの扱い方にまちがいがあり記者の皆さんは「今にみておれ、なにかあったら容赦しないぞ」と手ぐすね引いて待っていた。

 そこへ、不祥事である。各社一斉にかき立てたというのがある新聞の内幕ものにあった。さもありなんである。

 福岡でのマスコミとのその後の関係について知り合いの記者に聞いてみた。向こうでは「マスコミ担当者」がいて公表する事柄は真っ先にマスコミ各社にお知らせする。ファクスで資料を送るのはもちろん、担当者が記者の方々と電話一本で話ができる。記事として取り上げられないと「どうしてとりあげてくれないのか」と電話 がしょっちゅうかかってくるという。

 向こうではいくら企業が頑張ってもマスコミのようにすみずみまで届けるのは不可能だ、だったらマスコミに頼んでとりあげてもらった方がいい。マスコミには読者は絶大な信頼をよせており、この信頼感は一日や二日では出来ないものだ。

 そこで提案。各官庁、民間企業は「広報官」を任命してマスコミとの常時接触をはかってはどうか。

 県の場合、広報課があるからいいといわれるとそれはちょっと違う。広報課はあくまでも広報の専門である。ちょうど営業員がいつも受け持ちの企業を周り、売り込みに全力を尽くしているのと同じで広報官の仕事とは違う。各部課に広報官がいてもおかしくない。

 日本政府は官房長官がスポークスマンであるが、各部に広報官がいてマスコミからの問い合わせ、注文に応じている。アメリカでも広報官が政府の方針を毎日、記者団に説明している。

 「プレスリリース」というのは、新聞発表という意味だ。プレスリリースで思い出すのは琉球新報の外間政経部長だった。琉球米国民政府は毎日一抱えもある、写真付き、翻訳付きのプレスリリースを発行していたが、外間さんは、少しでも疑問点があると民政府に電話して問いただし、それでも埒が開かないとワシントンに電話し て確認をとっていた。この電話取材の現場にたまたま居合わせた本土の記者は目を丸くして「さすがは、沖縄の記者だ。英語で取材するとは」とびっくりしていた。

 外間さんの話しでは、アメリカには広報担当者がいてプレスの問い合わせには丁寧に応対する、とのことであった。

 広報官の発言は報道を左右するから慎重にならないといけない。広報官は報道に詳しい人が望ましいことは言うまでもない。しかし、初めから詳しい人はいない。やはりこの世界では経験がものをいう。

 思い出すのは沖縄ツーリストの故・東良恒社長のことだ。かつて同社の観光団が外国の鉄道事故にあったことがある。その時、記者団が同社に詰めかけ旧社屋の階段は記者団で、身動きがとれない。これを見た東さんは記者団用に一部屋あて、お茶やコーヒー、電話を用意してもてなした。後で東社長は「マスコミの方の仕事ぶり には感心した。いつ現地から情報が入ってくるかわからないのにひたすら待ち続ける。こんな報道の現場を見ていると偉いものだ。全部、読者サービスのためだ。われわれも見習わないといけない」ともらしていた。この模様は本紙で報じたからから覚えている読者もおられると思う。沖縄ツーリストのこの対応が全国的に話題にな り、以後、各社とも事故の際のマスコミ対応はスムーズになっている。 (「観光とけいざい」第621号02年10月1日号)  


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