沖縄観光30年史■連載13
渡久地政夫(沖縄観光速報社・代表取締役)


不気味な国・北朝鮮 拉致事件(2)

 今回の拉致事件の際に特に気付いたのは、あの国の人々と我々日本国民の間には考えの隔たりが相当大きいことである。あの国の人々はトップのことを「将軍様」と呼び、決して呼び捨てにしない。これは戦争前の日本人が「天皇陛下」と呼び、「天皇陛下の御為に」弾丸の下を突撃したことを思い出す。あの国では国民、あるいは人民は、全て「将軍様の為に」生き、生かされていた。人間では なく、人間に似た生き物だった。

 この考えは人間の歴史上、たくさんあった。ヒットラーやスターリンなどがそうである。権力を握った人間は戦争の際、捕虜として多くの人間を自分の国に連れ帰った。また白人はアフリカ大陸で黒人をたくさん拉致し、奴隷としてアメリカ大陸に送り込んだ。そこでは奴隷の市が立ち、奴隷(黒人)を売り買いした。

 アフリカ大陸では奴隷狩り(黒人狩り)がおおっぴらに横行し、一人捕まえればいくらという報奨金が与えられた。今回の北朝鮮の人たちは「日本人狩り」をしていたのではないか。なぜ日本人狩りをしていたのか。おとなりの国、北朝鮮と今後長いつきあいをしていく上でこれは大きな課題である。報道によると日本語を教えるためだったとしている。それ自体はおかしくない。

 問題は「日本語を教える人」を拉致するという行為である。政府に対し日本語の教師の派遣を申し入れればよいことであった。国交がなかったということはいいわけに過ぎない。国交がないから拉致していいのか、国交がないから人間狩りをしていいのか。その底には生きた人間を人間と思わず、石ころかなにかのように扱う非人間的なシステムである。こんなシステムには断固反対する。一時帰 国(という言い方もおかしい)した五人の発言、素振りをみているとあの国のあり方が浮かんでくる。我々の人間を見る感覚と向こう国の人々の考えがが違うのだ。

 考え方の違いが大きいといえば、昔の映画「猿の惑星」を思い出す。地球を飛び立った宇宙船が機器の故障で地球によく似た惑星に到着する。海や山、川など自然は地球にそっくりだが、そこはサル達が支配する惑星だった。宇宙船の乗組員達はサルにとらえられ、首輪をはめられて引きずり回される。サルの惑星は地球人の常識とは全てが違う。サル達と生活する羽目になる地球人達が見たもの は、体験したものはなんだったか、というのが粗筋だ。

 今度の五人を見ると「猿の惑星」そっくりだ。「将軍様のおかげ」という言い方、外の世界との断絶などをみるとサルの惑星と似ていると言わざるを得ない。同じ時期に発表された天皇とマッカーサーの会見記録にによるとマッカーサーは天皇に対し「これからは世論が大事だ。その世論は新聞が代表する。新聞報道を重要視すること」を助言している。マッカーサーは「今後は世論を大事にしな いといけない。これまで同様に天皇の考えだけで国を運営していくことはできない」というこであった。後はご承知の通りである。新聞の自由が保障され、基本的人権が言論の自由、往来の自由などとともに保障されてたのだ。

 そこで提案、国交正常化交渉は両国民のにとって最大の課題だが、実現には時間がかかりそうだ。であるなら、最低、次の二点から入ることが望ましい。

 一つは「往来の自由・行動の自由」である。両国の人々は希望すればいつでも自由に往来できる。かつて沖縄が本土復帰したとき、国民は往来の自由を歓迎した。それまで移動には沖縄にある米国民政府の許可が必要だったのである。

 第二の報道の自由だが、これは二つから成り立つ。取材の自由と公表の自由である。戦争中、広島の付近を列車が通過中、客車の窓はしめるようにいわれ、実際にしめた。乗客は列車が通過するまで外を見る事が出来なかった。

 戒厳令発令下の台湾では出国の際、テレビのカメラマンが、フィルムを向き取られた。

 米軍の占領中、新聞は事後検閲され、後で執筆した記者は追放された。取材の自由、見ることの許可が必要だった。アメリカにしてしかりである。

 いずれも自分に都合の悪いことは報道させない、見せないと言う、権力者の側の意向だった。権力者の恐ろしさである。北朝鮮でもこのようなことが起こっていることは十分考えられる。

 そこで前述のように報道の自由を認めた上で国民が自由に往来できるようにすれば、国交正常化に時間がかかっても両国民の正常な理解が進むはずだ。これは基本的人権の尊重ということである。

 正常化という包括的な話し合いの上で往来や報道の自由を認めるというのでなく、往来や報道の自由を先にみとめ、その上で正常化に持っていくという方法だ。実際には相手がある事だから簡単にいかないかも知れないが、いたずらに時間をかけるよりはいい。とにかく相手は我々の考えでは理解できない国だ。(「観光とけいざい」第623号02年11月1日号)  


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