沖縄観光30年史■連載18
渡久地政夫(沖縄観光速報社・代表取締役)


セールスこそ旅行社の生命

 前回にもすこしふれたが、宮里定三さんと東良恒さんは沖縄観光の大立て者だった。東さんは多くの旅行会社の幹部をそだてた。

 ある日、訪問するといつになく、くらい顔をしている。「どうかしましたか」と聞くと「実はね」と語りだした。

 同社の営業員がある顧客を観光施設に案内し、手数料を受け取った。ここまではどこにでもある話で別に変わったことでない。東さんは後でその手数料を自分のポケットに入れたことを知り、懲戒解雇にした。この人が「不当解雇だ」と主張して裁判に訴えたというのである。復帰前で組合運動盛んなころだった。「頭がいたいですね」というと「なに、こっちの主張を堂々というだけですよ」と笑った。

 それ以来、忘れていたが、ある日、ふと裁判のことを思い出して「どうなりました?」ときいていてみた。

 「ああ、あの件ね。あれはうちの主張がいれらてな、決着ついたよ」といった。

 「どういうことですか」と先を促すと、

 「旅行社の本質は販売手数料ですよ。極端にいうと店頭に並べられたパンフレットが商品です。パンフの中にはホテル、航空会社、土産物店、陸上の交通機関、販売手数料などがはいっている。手数料を高く見積もっても同業他社の動向も気になるし、無茶な値段はつけられない、社員全員のことを考えると販売手数料はバカにならない」

 旅行社の生命はいうまでもなく、セールスである。だからお客様優先である。電話がかかってきてもベルを二回以上ならすなと言明し、その通りにした。従業員の教育が絶対に必要だと考えコンサルタントに依頼して事業所と従業員の教育をした。この先生は一通りの座学(机の前に座って、勉強する)が終わって 販売研修に入るや「みんな包丁を五本以上売って来ること」と命令した。必ず家庭にあるのは包丁であるが、五本とは大変だ。一本は自分で買っても二本以後は初めて会う人に売 らないといけない。

 社長や講義の先生の手前「売れません」とはいえない。みんな死に物狂いになって包丁を売りに出かけた。同業社はこの話を聞いて「大手の沖縄ツーリストは包丁屋になった、本業の旅行商品は売らないで……」と笑った。

 セールスマンの中には自分でストーリーをつくり(ウソではない)をつくり、ノルマの五本を一日で売ったものもいた。講座が終わったとき、沖縄ツーリストの社員は沖縄一のセールスマンになっていた。

 どこよりも強力に旅行商品を売るようになったのである。

 またある日「添乗員は良いですね。あっちこっちいけて……」というと、

 「添乗員も適、不適がありましてね」という。

 「どうしてですか」と重ねていうと、笑って答なかった。

 後でチャイナエアラインの喜納さんに聞くと「添乗員はたいへんですよ。夜、お客さんが自室にひきあげたあと、あしたの行動予定を調べ、バス、中食、土産物店、有名なところにに連絡をとり、確認する。確認を忘れ手配がうまくないとお客さに苦情をいわれる。確認を取り、 大胆に変更する機転が必要だ。だから誰でも彼でも良いというわけには行かない」

 「そのためにも宣伝がゆきとどかないと行けないのでは」

 「その通りです」

 「その宣伝はではどうしましたか」

 そこでお茶を飲んで

 「それが重要な点です」(以下次号)

(「観光とけいざい」第629号03年2月15日号)  


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