沖縄観光30年史■連載31
渡久地政夫(沖縄観光速報社・代表取締役)


内と外のバランス

■海外・県外を見せた旅行社

 月刊沖縄社の佐久田繁社長ときどき会う。その佐久田氏がこんな話しをしてくれたことがある。

 「渡久地君、経営者は内だけ見てもだめだ。反対に外だけ見てもいけない。えてして事業経営が厳しくなると内(自分)のことばかりみて、外(事業の周辺)を見ない。内と外とのバランスが大事だ」

 「ぼくもこのバランスがとれなくて何度も失敗したよ」。

 最後にはこういうのが常だ。

 考えてみると「内と外論」はどんなところにもる。観光もそうだ。

 外だけ見ても、受け入れのサービスがなっていないとお客さん「ダメ」といわれダメになってしまう。

 ある県内の施設の経営者は開園当初、県内客だけをターゲットにしていたが、訪れる地元のひとびとの顔を見て思った。

 「この方々がこのつぎここに来るのはいつになるだろうか。あるいはもう来ないかも知れない。だったら沖縄に来たら、かならず来る人たちに宣伝した方がいい」

 そこで本土の旅行業者に宣伝した。観光客はどっと入って来た。観光コースの少なかった沖縄では貴重な見どころになったのである。

 佐久田社長がいう「内だけでなく、外に目を向けた」経営者の目のつけ所がよかったのである。

 観光業界でもこの種の話はよく聞く。地元のマスコミは県内向けにつくられている。だから県内で圧倒的な報道力を発揮しても県外ではそうでもない。県内の経営者はこの点を取り違えて県内のマスコミが取り上げたから全国へ報道されたと思う。だがこれは間違い。県内のマスコミはあくまでも県民向けだ。全国へいくはずがない。全国ニュースなら話は別だ。

 最近ではさまざまな媒体ができて県内の小さな媒体で取り上げられると、全国紙が面白がって後追いするということも多くなっているが、これはまだまだカケのようなものである。

 先の観光施設経営者はこのことをよく知っていたのである。

 観光の場合、観光客が来て初めて仕事になる。だから県当局をはじめ、関係者は必死になって誘客につとめている。これが分からないと観光は論じられない。離島へ行けばいくほど、この点の理解が行き届かなかった。内だけを見るから、そうなっていたのである。

 この欠点をなくすためには外を見るのが一番いい。外の業界はどうしているか。よく見て勉強することだ。

 沖縄の観光が上り坂のとき、旅行社は盛んに県内の観光業者を海外、県外へ視察に連れ出した。

 「つきあい旅行に金がかかり大変だ」という経営者もいた。

 しかし、このとき旅行社は県内観光企業に「よく外の業界をみるように」とのサインを送っていたのである。それは即、内の改革へつながることだったのである。(「観光とけいざい」第642号03年9月15日)  


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