沖縄観光30年史■連載41
渡久地政夫(沖縄観光速報社・代表取締役)


三猿主義はいけない

■旅行会社に情報が集まる

 人はだれでも自分の仕事に誇りと意義をもっているものである。

 その一人、沖縄ツーリストの東良恒社長にお会いした。当時の沖縄ツーリストは国際通りに木造二階建ての旧社屋時代である。沖縄は「これから観光に力をいれよう」という矢先だった。

 ある日、東さんをたずねてぶしつけに聞いた。

 「旅行業って沖縄にとってなんですか」

 東さんは「なんだそんなことか」という顔をしたが、

 「キミは野球を知っているか」といい、

 「はい、しっています」

というと、すぐに表情を元に戻した。

 「じゃ、話は早い。実は旅行業は野球のピッチャーであり、キャッチヤーであり、また審判であり、バッターなんだ。一人で色々なことをしている。例えばキャッチャーは素早くバッターの調子を見てこのバッターはカーブを打てないとか、速急に弱いという判定を下し、投手にそのことを合図する。投手は言われたとおりにボールを投げる。審判はボールを厳しく判定する。そのときに手元が狂ったりすると打たれる。

 旅行業も同じで企画が悪かったり、手元が狂うとうまくいかない。うまくいかないだけなら良いが、宣伝費、現地との折衝などで大きな出費を負担し、そのマイナスはとても大きい。

 だから一旦売り出すと決めたらみんなが一致して観光客をあつめるようにしないといけない。これはどこの旅行社でもそうだ。それと大事なことは三猿主義におちいらないことだ」

 「何ですかサンエン主義って」

 「見ざる、聞かざる、言わざるの三つのサルのことだよ。お客さんは目的地の悪いことはなかなかいわないんだよ。そこで旅行社は添乗員に命じてお客さんの感想を集めることにしている。その目的地の良い点、欠点を知っているのは実は旅行社かもしれない。何しろお客さんの生の声を持っているからね」

 「なるほど」。

 話はかわって、最近の事をこの話しと結びつけたらどうなるのだろう。

 五百万人を達成でき、次は五百二十五万人の目標をたてた。中には五百二十五万人はむつかしいという人もいる。何故難しいのかは解明されないままだ。

 まず一番にすべきは旅行業者の率直な意見を聞くことだ。残念ながら最近は旅行業社の意見や提案を聞く会合があったとは聞いたことがない。恐らく辛口の評価がとびだしたりするに違いない。

 聞く方にとっては辛いが観光で生きていくという方針があるのなら、直すべき所は直し、誤解しているところがあれば、堂々と誤解を解く方がいい。これだけ観光産業が注目されているのだから、県民の期待にも応えなくてはいけない。

 旅行業者というのは島国の沖縄にとっては大事な情報拠点と考えたら、どうだろう。情報を消費者の全部に行き渡らせるのは大変だが、全国の旅行社に情報を提供するのは比較的にやさしいはずだ。(「観光とけいざい」第652号04年3月1日号)  


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